JR西日本は11日、利用者が少なく採算が取れていないローカル線の一部区間の収支状況を公表した。明らかにしたのは、経費に対する運賃収入の割合である「収支率」で、いずれも50%を大きく下回る赤字の状況だった。新型コロナウイルスにより会社自体の経営状況が悪化する中、ローカル線の苦境ぶりを公表することで、廃線や鉄道以外の交通手段への転換などに向けて、各地域との議論を急ぎたい考えだ。
公表の対象としたのは、1キロあたりの1日平均利用者数(輸送密度)が2千人未満の計30区間。中国地方が多く、近畿地方でも兵庫県や京都府、和歌山県なども含まれている。収支率が10%未満の区間も少なくなく、最も低かったのは芸備線の東城-備後落合で0・4%、次いで木次線の出雲横田-備後落合で1・5%だった。毎年度、平均で数億円単位の赤字を出している計算で、30区間で計247億9千万円の赤字になる。
これまでは都市部や新幹線の利益でローカル線をまかなってきたが、全社的にコロナで利用が急減。2期連続の赤字を見込むなど経営状況そのもの不振が続いている。
JR西としては情報開示によって廃線やバスなどへの転換に向けて議論を進めたい考えで、長谷川一明社長は「地域のまちづくりに合わせた、今よりも利用しやすい最適な地域交通体系を幅広く議論、検討し、地域の皆さまとともに実現してまいりたい」とのコメントを出した。