露新司令官、シリアでは強引手法で民間人多数犠牲

2021年5月、ロシア南部ロストフナドヌーで対ドイツ戦勝記念日のパレードに出席するドボルニコフ南部軍管区司令官(タス=共同)
2021年5月、ロシア南部ロストフナドヌーで対ドイツ戦勝記念日のパレードに出席するドボルニコフ南部軍管区司令官(タス=共同)

米欧の主要メディアは11日までに、ロシアのプーチン大統領がウクライナ軍事作戦を統括する司令官に南部軍管区のアレクサンドル・ドボルニコフ司令官(60)を任命したと報じた。作戦を統括する司令官の任命は侵攻後初とされる。部隊間の連携を強め、ウクライナ東部の掌握に向けて攻勢をかける狙いだ。

ドボルニコフ氏は2015年にロシアが軍事介入したシリア内戦で作戦を指揮し、民間人多数が巻き添えとなった。批判をいとわず作戦を遂行した手腕をプーチン氏は評価するが、ドボルニコフ氏の司令官就任により、東部での戦闘激化に拍車がかかりそうだ。

露メディアによると、ドボルニコフ氏は1961年極東沿海地方ウスリースク生まれ。モスクワの軍学校を卒業し、第2次チェチェン紛争にも参加した。2011~12年には東部軍管区の副司令官を務め、その後、軍内部で要職を務めた。

15年9月~16年6月にはシリア内戦で露軍介入作戦を指揮。シリアのアサド政権は当時、反体制派やイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の攻勢を受け劣勢に立たされていたが、露軍はIS〝殲滅(せんめつ)〟を名目に大規模空爆を連日実施。アサド政権軍の立て直しを後押しした。

ただ、米国務省は15年11月、露軍の空爆対象の約9割は穏健な反体制派だったと証言。シリア人権監視団は露軍による空爆開始以降、民間人約500人が死亡したと発表するなど、露軍の作戦が実際には、アサド氏と対立する反体制派を押さえ込む目的で実施されていた疑惑が強まった。プーチン氏はドボルニコフ氏の戦功を高く評価し、16年3月には「ロシア英雄勲章」を授けた。

プーチン政権は第2次世界大戦での対ナチス・ドイツ戦勝の記念日にあたる5月9日までに一定の戦果を挙げる狙いとみられ、ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州の制圧に向けて戦力を集中させつつある。ドボルニコフ氏の司令官任命は、シリアでの「成功」の再現を狙うプーチン政権の意図の表れとみられるが、露軍がシリアと同様に苛烈な作戦を実施すれば、民間人の犠牲が激増する恐れがある。(黒川信雄)

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