ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアで、欧米や日本による前例のない経済制裁が市民生活を直撃している。物価は高騰し、国内での業務を停止する外資系企業も続出。米ファストフード大手マクドナルドの営業停止日には、長蛇の列を作る市民の姿が注目を集めた。露軍による民間人虐殺疑惑で、さらなる制裁強化は不可避だ。首都モスクワに住む一般市民の生活は、どう変わったのだろうか。
砂糖に殺到
「食料品は日に日に値上がりしている。どこまで上がるのか」。オンラインで取材に応じてくれたモスクワ在住の20代の男性会社員は嘆く。
買い物に行くと目につくのは、タマネギやリンゴなどの生鮮食品の価格の高騰だ。日々の食卓に欠かせないジャガイモやチーズなどの乳製品も日を追うごとに値段が上昇。男性は「侵攻前は約60ルーブル(約95円相当)で買えた牛乳(900ミリリットル)が、たった1カ月で10ルーブルも急騰して困っている」と漏らす。
侵攻開始間もない3月上旬には「砂糖がなくなる」との噂が広がり、一時的に品切れになった。「自家製ウオッカに欠かせない砂糖がなくなるとの危機感から買い占められたのかも」。男性はこうしたロシアならではの事情も影響したとみている。
以前からインフレーションに見舞われていたロシア。西側諸国の経済制裁によるルーブルの急落も拍車をかけ、侵攻後の4月1日に発表された年間インフレ率は前年比16・7%に達した。欧州からの経済制裁を受けていたクリミア併合後の同16・9%(2015年3月時点)に迫る高水準だ。男性は「値上がりには慣れたが、インフレが加速している実感もある。物価高騰は家計に響き、将来の不安も大きい」と吐露する。