「デジタルな頭脳とアナログな心」。企業トップの方々の言葉を収載した冊子に「経営者に必要」として挙げられていた名文句なのですが、西郷隆盛に関する話をする機会があるさい、拝借しています。というのも、「西郷は頭脳も心もアナログだった」といった評は、彼に関する誤解の最たるものの一つだからです。
西郷は極めてデジタルな思考回路をもっていました。各種のデータを幅広く集め、論理的に分析して有効な対策を立てました。それゆえ、彼がひどく嫌ったのは「無策の輩(やから)」─事前になんら対策を講じない人物でした。
デジタルな頭脳の持ち主である一方、西郷の心はアナログそのものであり、それが大きな魅力でもありました。一例を挙げると、情が深く、女性に対しても優しかったことです。妻の糸子は、西郷が食事のたびに感謝や称賛の言葉を口にした、と証言しています。