誰にでもきっと勝負飯があるだろう。
私も今までの人生を振り返ってみると、人生の大事なときにはいつもおいしいご飯に救われていた。そのことを実感した出来事があった。
高校3年生の秋、私は第一志望の大学受験に臨んだ。緊張で小論文を書く手は震えていた。
その日のお弁当は、私の大好きな炊き込みご飯だった。いつものように梅干しがアクセントで一つだけ、ちょこんと上に載せられている。
その炊き込みご飯は母の得意料理で、ツナ缶とえのき、塩、しょうゆだけのシンプルなものだ。だが、私の大好物であった。
母のエールが伝わってきてうれしくて、いつものように大事に味わいながら食べた。するとあんなに緊張していたのが噓のように心が落ち着いていった。
そのおかげか午後からの面接でも自分の想いを面接官に伝えることができ、私は見事受験に合格することができた。
今思い返せば、母はいつも私の元気がない日、気合を入れて頑張らないといけない日、そして人生がかかった大事な日には、あの炊き込みご飯を作ってくれた。
母はいつもこうやって私の背中を頑張れと押し続けてくれていた。
母よ、ありがとう。私もいつかあなたのように、そっと背中を押してあげられる大人になりたいと心から思う。
門林歩(19) 大阪府和泉市