聞きたい。

小川格さん 『日本の近代建築ベスト50』 次世代に継承するために

南風舎顧問 小川格さん
南風舎顧問 小川格さん

「もっと近代建築の面白さを市民に知ってもらいたい。一般の関心が低いがゆえに、いつの間にか壊されてゆく現状を何とかしたい。遠回りでしょうが、まずは近代建築により親しんでもらおうと、ガイドとなる本を目指しました」

米建築家のフランク・ロイド・ライトなど設計「自由学園明日館(みょうにちかん)」(大正11年)から西沢立衛(りゅうえ)設計「十和田市現代美術館」(平成20年)まで、主に20世紀の日本に生まれた50の建築を独自の視点で選んだ。原則として公共施設や美術館、劇場など、一般市民が見学可能なものに限定。建物や建築家の概要だけでなく、背景にある〝物語〟を伝えるよう工夫した。

近代建築には広義の意味があるが、本書が扱うのは「国立代々木競技場」(丹下健三設計)のように鉄とコンクリート、ガラスを主材料とした、いわゆるモダニズム建築だ。モダニズムと題していないのは「幾何学的、インターナショナルスタイルの印象が強くなり、例えば村野藤吾さんや今井兼次さんらのユニークな建築を入れにくくなる。日本近代建築の多様性も示したかったから」という。

戦後の経済成長期の作品が多い。自身も若き編集者として数々の建築の誕生を目撃してきた。「日本の建築が爛熟(らんじゅく)していた時代。本当に面白い時代でした」と振り返る。70歳で引退し、自身のブログ「近代建築の楽しみ」を開設。全国各地の建築を訪ね歩き、その魅力を発信し続けている。

本書に掲載した「中銀カプセルタワービル」(昭和47年)は黒川紀章が建築思想「メタボリズム」を具現化した代表作だが、惜しくも取り壊しが始まる。他にも築50年に満たないビルがどんどん建て替えられている。「膨大な資源のロス。改修して使い続けるのが世界の主流なのに…」。文化資産として次世代に継承できるか。近代建築は大きな岐路にある。(新潮新書・880円)

黒沢綾子

【プロフィル】小川格

おがわ・いたる 建築専門編集事務所「南風舎」顧問。昭和15年、東京都生まれ。法政大工学部建築学科卒。新建築社で専門誌『新建築』を担当後、設計事務所に勤務。相模書房を経て、南風舎を設立した。

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