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『プーチンの世界 「皇帝」になった工作員』 ウクライナ侵攻で注目

『プーチンの世界 「皇帝」になった工作員』(新潮社)
『プーチンの世界 「皇帝」になった工作員』(新潮社)

『プーチンの世界 「皇帝」になった工作員』フィオナ・ヒル、クリフォード・G・ガディ著 濱野大道、千葉敏生訳(新潮社・3520円)

核戦争の脅威で世界を恫喝(どうかつ)し、ウクライナへの侵略を続けるロシアのプーチン大統領。「あまりに危険すぎる人物」の本質を見抜き、侵略を予測していたのが本書の筆者の一人で米国のシンクタンク、ブルッキングス研究所のフィオナ・ヒル氏だ。

原著は米国で刊行。2014年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島併合を経て15年に増補改訂され、その日本語訳が16年に出版された。2段組で528ページに及ぶ大著だが、ウクライナ侵攻を受けて注目が高まり、品切れとなる書店が続出した。主要ネット書店でも完売となり、緊急増刷された。

プーチン大統領が幼少期に初めて経験したけんかで敗れ、その際に得た教訓が示唆的だ。「どんな戦いでも最終決戦のつもりで最後まで戦い抜く…引き返すことなどできず、最後まで戦う以外に選択肢はない」。一度設定した目的を達成するためには、いかなる手段も問わずやり遂げる。侵略戦争の行く末は悲観的にならざるを得ない。

侵略の口実とした「歴史観」。国民の権限よりも国家存続が優先する「国家観」。帝国復活にとらわれたプーチン大統領の内在的論理を分析した決定版といえる。(岡部伸)

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