度重なる追加接種で懸念も 4回目接種に専門家「立ち止まり検討を」

新型コロナウイルスの感染再拡大の兆候が指摘される中、政府は4回目のワクチン接種準備を5月末までに終えるよう全国の自治体に通知し、対象者などについて検討を進めている。ただ、感染力が強いとされるオミクロン株の派生型BA・2への置き換わりが進む中で、4回目接種が先行する国では効果が限定的だとする報告もある。専門家からは「政策ありきではなく、ワクチンの効果について立ち止まって検討すべきだ」との声も上がっている。

〈事務的な準備期間も考慮し、2カ月程度をめどに接種券の発送準備を完了すること〉。厚生労働省は3月25日、全国の自治体にワクチン4回目接種に向けた準備を進めるよう、こう通知した。対象者や接種間隔については、専門家でつくる厚労省のワクチン分科会が海外などの事例も踏まえて検討する。

異例の追加接種に向けた準備を加速するのは、感染再拡大の兆候が見られ始めているからだ。今月に入って愛媛や宮崎など7県で過去最多の新規感染者を記録し、大阪や東京などではほぼ横ばいの状態。一方、ワクチンの3回目接種率(8日時点)は高齢者では約84%だが、全年齢になると約44%にとどまる。

ワクチン接種の効果は時間の経過とともに低下することが指摘されている。一方、昨年末から4回目接種を開始したイスラエルでは、3回目に比べ抗体価の顕著な増加が確認されなかったとの研究報告もある。

こうした状況を踏まえ、4回目接種が先行する各国でも、対象者を限定して進めているのが実情だ。英国やドイツなどが対象とするのは高齢者や介護施設の入所者、職員など。免疫不全など重症化リスクが極めて高い人に絞る国もある。

数カ月間隔でワクチン接種を繰り返すことを国が推奨するのは極めて異例で、懸念を示す専門家もいる。埼玉医科大の松下祥教授(免疫学)は、短期間に同じワクチンを打ち続けると、過去の接種で得られた抗体により変異型に対する抗体ができにくくなる「抗原原罪」と呼ばれる現象を懸念。「4回目以降についてはいったん立ち止まり、検討すべきだ」と訴える。

ただ、3回目接種ではBA・2にも有効な抗体が得られると判明しており、神戸大の森康子教授(臨床ウイルス学)は「今後の研究や議論でたとえ4回目は不必要という結論になったとしても、3回目は確実に受けてほしい」と求める。

ワクチンは感染や重症化予防策の一つであり、ほかの感染症対策の徹底が重要なことは言うまでもない。厚労省のワクチン分科会長の脇田隆字・国立感染症研究所長は「コロナ対策におけるワクチンの位置づけを大きな視点で考える必要がある」としている。(花輪理徳)

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