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大河と並行して「平家物語」を見るべし

1月からフジテレビで放送されたアニメ「平家物語」(原作・古川日出男、監督・山田尚子)が最終回を迎えた。深い悲しみをまとった、繊細で美しい作品だった。世界で紛争が起こっている最中だからだろうか。多くの命とともに平家が滅びた後に残るむなしさが、800年の時を超え、リアルな痛みを伴って胸を締め付けた。

アニメの主人公は未来が見える目を持つ琵琶(びわ)法師の少女、びわ。平家の滅亡を予言するが、一門に寄り添い運命を見届ける。平清盛の長男の重盛、その子の維盛(これもり)や清経(きよつね)、そして幼い安徳天皇…。びわは慕う人たちの死を苦しみながらも受け止め、語り継ぐことで彼らを生かし、その魂を慰める。合戦の勇壮さよりも、一人一人の人間くさい弱さや苦悩が丁寧に描かれていて、現代を生きる私たちにも感情移入しやすい。

アニメ自体の見応えもさることながら、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」と源平合戦の時間軸がほぼ一致して進行したのは心憎い演出だった。平家の視点で描かれたアニメと、源氏側が主人公の大河ドラマとでは同じ出来事も見え方が違う。

水鳥の羽音を源氏の奇襲と勘違いして平家が逃げ帰った逸話が残る富士川の戦い。「鎌倉殿-」では水鳥が飛び立った理由がコミカルに描かれたが、アニメでは羽音とともに平家の総大将、維盛の心に広がった恐怖と絶望が痛々しく胸に迫った。

源氏にとって平家は「悪」だが、平家からすれば源氏こそが破壊者だ。両番組を並行して見ていると、歴史が教科書のような平面ではなく、多面的で立体的に浮かび上がる感覚に夢中になった。

「鎌倉殿-」の作者、三谷幸喜さんは昨年7月に源頼朝や清盛も登場するミュージカル「日本の歴史」を上演するにあたり、歴史が好きな理由を「自分がこれから生きていく未来の答えがある気がするから」と語っていた。血で血を洗う源氏と平家の争いの歴史から、私たちはどんな答えを得るのだろうか。

アニメ「平家物語」は動画配信サービスで配信中。(佐)

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