ウクライナのIT人材活用 18歳女性副社長が就労支援

パソコンを使った避難民への仕事依頼の事業を話し合う中井咲希さん(手前右)とアンナ・クレシェンコさん(左)=3月5日、京都市中京区
パソコンを使った避難民への仕事依頼の事業を話し合う中井咲希さん(手前右)とアンナ・クレシェンコさん(左)=3月5日、京都市中京区

ロシアによる軍事侵攻で困窮するウクライナ人を支援しようと、大阪のベンチャー企業がウクライナ人起業家とともに、避難先でも可能なホームページ(HP)制作といったIT関連の仕事を避難民に紹介する事業を始めた。着目したのは、「東欧のシリコンバレー」とも称されるウクライナのIT人材。パソコンとインターネット環境さえあれば仕事ができる特徴を生かした支援で、息の長い支援につながる可能性もあり、注目が集まっている。

大阪市でIT関連事業を手がける「ネクストエージ」副社長の大学1年、中井咲希さん(18)が、ウクライナ支援策を考える中、同国民にIT人材が多いことに着目。ウクライナ人留学生でIT関連の起業家、アンナ・クレシェンコさん(25)=京都市=と計画し、実現に至った。

同社がこれまで培ったノウハウを生かし、日本の企業にウェブページ制作やプログラム作成の発注を募り、クレシェンコさんが交流サイト(SNS)や自身のウクライナ人脈を駆使して避難民らに紹介する仕組み。報酬はオンライン送金システムで払う。すでに10件以上の依頼があり、うちHP制作の2件で、ウクライナ西部に避難中の20代と30代の男性プログラマーが、それぞれ仕事を始めている。

ウクライナは、旧ソ連時代から原子力や航空宇宙などの分野で研究開発が盛んで、独立後もIT産業が飛躍的に発展した。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、同国のIT市場規模(2018年現在)は約45億ドルで、5年前に比べ約2・3倍に成長。IT関連の学位を持つ学生は年間1万6千人輩出されており、IT人材は国内で18万人以上にのぼる。こうした背景もあって、アマゾンやグーグルなどの米巨大IT企業が研究開発拠点を構え、多くの人がIT産業に関わっていた。

クレシェンコさんによると、ウクライナのIT技術者の多くが戦乱を逃れて国内の安全な地域や国外に避難したが、仕事を失ったり、休職したりしている人が多い。クレシェンコさんは「仕事という形での支援はとても明確で、避難している人たちのやる気にもつながる。ぜひ現地に共有していきたい」。中井さんは「戦乱で仕事を失った避難民の助けになれば」と話している。

避難長期化で懸念も

ウクライナから国外に逃れた避難民は、同国民の約1割に相当する421万人にのぼる。戦闘が長期化の様相をみせる中、避難民と避難先の住民との間で軋轢(あつれき)が生じることも懸念されており、支援のあり方が課題となっている。

ウクライナの隣国・モルドバで支援活動にあたるNPO法人「難民を助ける会」の堀江良彰理事長(53)は「支援してきた住民の誰もが、戦闘がここまで長引くと思っていなかったはず。快く受け入れてきた住民にも疲労が蓄積している」と指摘する。戦闘の長期化に伴い、避難も長期化が予想されるため、言語や文化、宗教の違いにより生じるトラブルなどのほか、支援金などで生活を維持する避難民に対する「やっかみ」も生まれやすい状況にあるという。

堀江氏は、今後さらに避難が長期化することを想定し、言語教育や就職支援が必要になると指摘。「過去の難民のケースでは、言葉の壁により多くが肉体労働にしか就けないということもあった」とし、行政や民間団体によるきめ細かな支援が重要だと強調した。

こうした中、日本で動き出した、民間によるITを使った仕事斡旋(あっせん)の取り組み。堀江さんは「プログラム言語が分かれば言葉の違いを超えて仕事ができるという意味で、有効な方法になりうるのでは」と期待している。(秋山紀浩、写真も)

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