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「世界ふれあい街歩き」の何もない時間

旅先で時間ができると、街を歩きたくなる。目的地も決めず、行き当たりばったり。角を曲がるごとに新しい景色に出合う。土地ならではの暮らしが見えてきたりする。そのうちに、街の空気になじんでくる。頭の中の地図帳に、街が組み込まれていく。

そういう散歩好きなので、NHKの「世界ふれあい街歩き」(BSプレミアム)は、お気に入りのひとつだ。番組の特長は、視聴者自身が歩いているような気分にしてくれるカメラワーク。レンズを目線の高さに据えて移動しながら撮影。見上げたり、見回したり、よそ見したり、という感じで視線に変化をつける。

クルーは街で出会った人に声をかけるが、取材側の音声は消されて、ナレーター役の俳優やタレントが日本語をアフレコ。一方、相手の言葉には字幕がつく。放送では、日本語と字幕つき外国語のやり取りが繰り広げられる。

名所旧跡も目にした記憶があるけれど、観光案内的な要素は控えめ。街の説明はあるものの、歴史をひもとくとか、ドラマを発掘するとか、そういうことは二の次。基本はぶらぶら街を歩くだけ。

先日見たのは、サンマリノ共和国の首都「サンマリノ」編。かなり出会いに恵まれた回では。声をかけた相手がなんと元国家元首だったり、2度も結婚式(1つは演劇)に出くわしたり、かなり珍しそうな民家を案内してもらったり、充実の内容だった。

でも個人的にこの番組で一番好きなのは、何もない時間なのだ。特にナレーションもなく、変わったことも起きないまま、街のざわめきの中をゆっくりカメラが移動していく。そういう余白がいい。

「ふれあい」も、通りすがりに誰かが会釈してくれたりとか、市場のおばさんから品物の説明を聞くだけ聞いてバイバイだったりとか、その程度で十分。なんならもうずっとノーナレで、ひたすら街の映像を流してくれたっていいんだけど。さすがにそれでは退屈すぎるかな。(ライター 篠原知存)

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