習氏「安全は軍事同盟で実現できず」 ドゥテルテ氏に対米接近牽制

中国の習近平国家主席=8日、北京の人民大会堂(共同)
中国の習近平国家主席=8日、北京の人民大会堂(共同)

【北京=三塚聖平、シンガポール=森浩】中国の習近平国家主席は8日、フィリピンのドゥテルテ大統領と電話会談し、「地域の安全は軍事同盟の強化では実現できない」と述べた。フィリピンと米国との連携強化を牽制(けんせい)した形だ。

中国外務省によると、習氏は「地域の安全保障の主導権を自らの手にしっかりと握り、地域の平和と安定を共に守りたい」と呼び掛けた。同時に、新型コロナウイルス対策や経済関係の強化をさらに進める考えを示した。

フィリピンでは5月の大統領選後にドゥテルテ氏が退任する。フィリピン側の発表によると、両首脳は同氏在任6年間の中比関係は「前向きで創造的だった」とし、「この数年の間に得たものを未来につなげる」ことを確認した。ドゥテルテ氏は中国の覇権的な南シナ海進出を受けても一貫して対中接近を志向してきたが、次期政権にも政策の継承を期待した形だ。

バイデン米政権はアジア太平洋地域への関与を強めており、米比両軍が今月8日まで過去最大規模の合同軍事演習を行うなど、安全保障関係の強化を目指している。中国側には、ドゥテルテ氏の退任前にフィリピン側を改めて引き付ける狙いがあるとみられる。

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