対露制裁広がらぬアジア 問われる「代表」の真価

外務・防衛閣僚協議の初会合に臨む(左から)フィリピンのロレンザーナ国防相、ロクシン外相、林芳正外相、岸信夫防衛相=9日午前10時、東京都港区の飯倉公館(代表撮影)
外務・防衛閣僚協議の初会合に臨む(左から)フィリピンのロレンザーナ国防相、ロクシン外相、林芳正外相、岸信夫防衛相=9日午前10時、東京都港区の飯倉公館(代表撮影)

ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、日本が「アジアの代表」(岸田文雄首相)としての真価を問われている。東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドをはじめとするアジア各国はロシアとの軍事的、経済的結びつきが強く、日本や米欧が実施する制裁とは距離を置く。中国に端を発する台湾有事や日本有事でも同じ構図が想定されるだけに、自由や法の支配を中心とする価値観をアジアに根付かせる外交を展開できるかが焦点となる。

「ロシアのウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす行為であり断じて許容できず、厳しく非難する」

林芳正外相は9日に都内で開かれたフィリピンとの外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)でこう強調した。岸信夫防衛相もロシアを非難したが、記者団に公開された会議冒頭でフィリピン側出席者からウクライナ情勢に言及はなかった。

アジアで対露制裁を行っているのは日本、台湾、韓国、シンガポールなどにとどまる。フィリピンは国連総会の対露非難決議には賛成しているが、対露制裁は行っていない。ラオスやベトナムは、インド、バングラデシュ、スリランカとともに国連総会決議で棄権に回っている。外務省幹部は「厳しいが、これが現実だ」と漏らす。

台湾有事や日本有事でも同様の事態が懸念される。中国のアジア各国への影響力はロシアを大きくしのぐ。ロシアにさえ配慮する国が、中国との関係を悪化させてまで台湾や日本の肩を持つ可能性は低い。

中国の王毅国務委員兼外相は3月末から今月3日にかけ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピンの外相と中国国内で会談した。ウクライナ情勢をめぐり、自国やロシアが有利になるよう働きかけたとみられる。

林氏もウクライナ侵攻を受け各国外相との電話会談や外国訪問を重ねるが、米国や欧州、エネルギーを依存する中東などが中心で、アジアではインドネシアと韓国との電話会談にとどまる。外務省幹部は「欧州などに比べると今はどうしてもアジアの優先度は落ちる」と明かす。

アジアを糾合するための財政的な裏打ちが必要だとの意見も出ている。ある外務省幹部は「政府開発援助(ODA)予算を抜本的に拡充して、いざというときに中国の影響を排除できるくらいASEANやインドを支援する必要がある」と訴える。

ODA予算は1990年代に1兆円を超えていたが、近年は5000億円台で推移する。途上国支援の在り方が変化している背景もあるが、予算の多寡が外交力に与える影響は否定できない。日本が取り組むべき課題は、防衛費の増額だけではなさそうだ。(石鍋圭)

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