露外交官国外追放 慎重一転、欧米と足並み

ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使
ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使

日本政府が8日、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、在日露大使館の外交官と通商代表部職員計8人の国外追放を発表した。日本政府が複数名の外交官らを一斉に追放した事例は初とみられる。当初、政府には消極的な姿勢が目立ったものの、民間人殺害などロシアによる数々の蛮行が明るみに出たことで、欧米と足並みをそろえて抗議の意思を示す必要があるとの判断に傾いた。

国外追放は外務省の森健良事務次官が8日夕、ロシアのガルージン駐日大使を同省に呼んで通告した。森氏はロシア軍の行為を「重大な国際法違反であり戦争犯罪だ」と指弾。そのうえで「民間人殺害を否定し、フェイクと主張するロシア側のプロパガンダは全く受け入れられない」として、8人の追放を伝えた。

外交関係に関するウィーン条約では、受け入れ国は他国の外交官を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として国外追放できる規定がある。政府は今回「その制度を踏まえて」(外務省幹部)退去要求したとしている。政府は8人の氏名や職位を明かしていないが、ガルージン氏は含まれない。

もともと政府内には追放に慎重な意見が強かった。ロシア側が同等の報復に出ることが予想され、そうなれば約1200人のロシア在留邦人の保護にも支障が生じかねないためだ。外務省幹部は「欧米は何かあっても自力で逃げてという感じだが、日本は大使館に多くの役割が期待されている」と話す。

一方で、欧州諸国ではウクライナ侵攻が始まって以降、露外交官の追放が相次いでおり、米外交誌フォーリン・ポリシー(電子版)によると、その数は少なくとも394人にのぼる。先進7カ国(G7)の一角として、日本政府としても無為ではいられない状況になっていた。

日本の外交史上に残るであろう措置だが、岸田文雄政権の発信は抑制的だ。発表は外務省が事務レベルで行った。首相は8日の記者会見では自ら言及せず、質問を受けて「現下のウクライナ情勢を踏まえた措置だ」などと説明するにとどめた。(千葉倫之)

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