首相、戦争犯罪で制裁強化 国民に〝痛み〟も

会見に臨む岸田文雄首相=8日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)
会見に臨む岸田文雄首相=8日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)

岸田文雄首相がロシア産石炭輸入の禁止や外交官追放を決断したのは、ロシアが侵攻したウクライナで多数の民間人殺害などが明らかになり、日本として先進7カ国(G7)と結束し、ロシアに一層厳しい対応を取るためだ。ただ、ロシアの対抗措置が想定されるうえ、エネルギー分野の制裁は非資源国である日本にとって国内経済や国民生活への〝痛み〟を伴う。首相は影響緩和に向けた対策とともに、国民の理解を得る努力が必要になる。

「(ロシアの)非道な侵略を終わらせ、平和秩序を守るための正念場だ。国民の理解と協力をよろしくお願いする」

首相は8日の記者会見で、国民に協力を呼びかけた。

政府はこれまでプーチン大統領の資産凍結などの制裁に踏み切ったが、エネルギー分野の制裁には慎重だった。首相も、日本企業が参画する露極東サハリンの石油・天然ガス開発事業「サハリン1」「2」について「エネルギー安全保障上、極めて重要だ」として、撤退を否定してきた。

だが、外務省関係者は「(多数の民間人が殺害されたキーウ近郊の)ブチャでフェーズが変わった。エネルギーも何かしないといけないというムードになった」と打ち明ける。

ロシア産石炭は全体の輸入から見れば一部で、代替調達しやすいとの見方もある。だが、対露制裁で日本を含む西側諸国が調達に動けば、市場価格が上昇し、国内の電気料金などの値上げにつながる恐れがある。

ロシアの侵攻が長期化の様相を呈する中、G7や欧州連合(EU)でも制裁の実効性を高めるため、原油や天然ガスの禁輸に踏み切るべきだとの声は根強い。政府関係者は「資源国と資源のない国の政策の幅のズレが強くなってきている」と指摘する。

すでに、日本経済はウクライナ侵攻を受けた燃料高や原材料高が直撃し、新型コロナウイルス禍からの回復の障害になっている。報道各社の世論調査で首相の対露制裁は支持されているが、さらに踏み込んだ制裁措置が求められる可能性もあり、首相は改めて決断を迫られる。(田村龍彦)

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