改正少年法が1日に施行され、犯罪を起こして正式に起訴された18、19歳の「特定少年」については、実名報道が可能となった。実際に報じるかどうかは、報道各社が独自に判断する。
民法の改正で成人年齢が18歳に引き下げられ、引き続き20歳未満に適用される少年法でも、18、19歳については17歳以下と異なる扱いが求められたことによる。
家裁から原則的に逆送する対象事件も、従来の殺人や傷害致死の「故意の犯罪行為で被害者を死亡させた罪」から、強盗や強制性交、組織的詐欺といった「法定刑の下限が1年以上の懲役・禁錮の罪」に拡大した。
すでに公職選挙法の改正により選挙権を付与されている18歳以上に大人としての責任を求めるのは当然である。「捕まっても名前は出ない」といった甘えが犯罪へのハードルを下げ、特殊詐欺の出し子などへの誘い文句となっている事例もある。
権利に伴う義務について自覚を促す意味も大きく、改正少年法の施行が、18、19歳が自らの行動に責任を持つ契機となればいい。
少年法61条は、容疑者の少年が特定されれば更生を妨げる恐れがあるとして、実名や住所、顔写真などを含む報道を禁じている。改正法では68条が新設され、特定少年は61条の対象から外れた。
ただし、保護更生を目的とする少年法の趣旨は変わらず、特定少年でも略式起訴の場合は本人が推定できる推知報道は禁止される。また、最高検察庁は氏名公表の検討対象を「犯罪が重大で地域社会に与える影響も深刻な事案」とする基準を示し、典型例に裁判員裁判対象事件を挙げている。
いずれにせよ、これらは過渡期の措置であるととらえたい。本来は民法、公選法、少年法で大人と子供の境目が異なるのは不自然である。3法で成人年齢を18歳にそろえる改正が検討されたが、与野党の一部や人権団体が反対し、妥協の産物として折衷案の改正少年法が成立した経緯がある。
結果として選挙権は有するが、罪を犯しても少年法が適用される18、19歳という、どっちつかずの年齢層を生んだ。
改正法には「施行5年後に制度見直しを検討する」という付則が設けられた。実際の運用状況を踏まえ、将来的には大人の線引きを一本化することが好ましい。