7日告示の参院石川選挙区補欠選挙は、立憲民主党と共産党がともに参戦し、夏の参院選改選1人区で野党候補者の一本化を強く訴えてきた両党にとって厳しい前哨戦となる。野党共闘の象徴と位置付けられてきた共通政策も折り合える保証はない。競合を容認するような空気も醸成されつつあり、立民と共産の距離は遠のきかねない。
「自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党による平和を壊す翼賛体制を許さない審判を下そう。政治を変える道は市民と野党の共闘しかない」。共産の志位和夫委員長は7日、党本部で開かれた参院選の全国総決起集会で党員らにこう呼びかけた。
ただ、その共闘は出だしからつまずいた。石川補選で野党候補者の一本化が実現しなかったためだ。7日の告示日、立民候補の第一声に駆けつけた森裕子参院幹事長は、自民の森喜朗元首相の影響力が色濃く残る石川県の政治状況に関し「みんなうんざりしている。森王国の閉塞(へいそく)(へいそく)感をぶち破ろう」と訴え、立民への支持を呼びかけた。
共産関係者は夏の決戦に向けた候補者調整の前段階として「共通政策と政権の在り方についての話し合い」を進める考えだと説明している。とはいえ、共通政策をめぐる協議がスムーズに進むかは不透明だ。
共産はこれまでの国政選挙と同様、安全保障関連法への反対を明確に訴えるべきだと主張するが、ロシアによるウクライナ侵攻などを受けて国防の重要性が叫ばれる中、立民内には国民の理解は得られにくいという懸念の声もある。実際、立民幹部は安保関連法の扱いについて「党として対応は決めていない」と明言を避けている。
志位氏は決起集会で「急迫不正の主権侵害に際しては自衛隊を活用する。憲法9条は戦争を放棄し、戦力の保持を禁止しているが、無抵抗主義ではない」とも訴えた。護憲を掲げ、綱領で「自衛隊の解消」と明記する共産への不安を意識した発言とみられる。しかし、記者団には「野党間で政策を考える場合、安保法制の廃止はますます重要かつ不可欠になっている」と強調しており、立民側と折り合えるかが焦点となる。
一方、立民の泉健太代表は野党が勝利したことがない選挙区に関して「各党が出してもいいのではないかという声もある」と指摘。競合を容認する発言とも受け止められており、参院選は限定的な共闘となる可能性もある。(内藤慎二)