【ロンドン=板東和正】北大西洋条約機構(NATO)加盟国の東欧チェコがウクライナ軍に戦車を提供した。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)などが5日、チェコ当局者らの話として伝えた。2月24日のロシアによるウクライナ侵攻後、外国政府がウクライナに戦車を提供したのは初めて。NATOは6日からブリュッセルの本部で開催する外相会合でウクライナへの兵器の支援拡充について協議する。
ウォールストリート・ジャーナルなどによると、チェコはウクライナに数十台の旧ソ連製戦車やりゅう弾砲などを提供。チェコ政府や民間の資金協力で実現した。ウクライナでは戦車などの兵器を修理する防衛産業拠点が露軍に破壊されており、チェコの協力は貴重とみられている。
NATOのストルテンベルグ事務総長は5日の記者会見で「向こう数週間のうちにロシアはウクライナ南東部での攻勢を強めると予想される」と指摘。露軍が東部ドンバス地域全体の占領などを狙い、部隊の再編成や補給を行っているとの見解を示した。
「露軍の再配置にはしばらく時間がかかる」とし、「その間にNATO加盟国が(ウクライナに)支援を提供することが非常に重要になる」と強調。6~7日の外相会合で対戦車ミサイル「ジャベリン」や防空システムなどの供与について協議すると述べた。サイバー対策の支援強化も視野に入れるという。
外相会合では、ロシアに近い東欧の加盟国の防衛態勢の強化や、対露支援が懸念される中国への対応についても話し合う見通し。NATO加盟国のほか、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを招き、アジア太平洋地域との連携も確認する。