ビブリオエッセー

海のレスキューにかける青春 「トッキュー‼」原作・小森陽一 漫画・久保ミツロウ(講談社)

中学3年の夏、兄がこの『トッキュー‼』という漫画をくれた。兄は海上保安官をめざしていたとき、よく読んでいたのだ。僕は兄のことが大好きでとても尊敬しているので、すぐ手に取ったが、読み進むうちにすっかりはまって、あっという間に全巻を読み終えた。

この漫画は神林兵悟という主人公が海上保安官として成長していく姿を描いている。日本の海を守る海上保安庁の職員で危険と隣り合わせの海難救助などの現場で働く海上保安官。めざした理由は子供の頃に漁師の父を海で亡くしたことだった。兵悟は厳しい訓練を経て過酷な海に向かう。そこではチームの規律や個々の責任感、なにより互いの信頼が要だ。

さらにめざしたのが最も難易度の高い特殊救難隊、通称「トッキュー」だった。舞台は羽田特殊救難基地。ここで石井盤(メグル)というライバルと出会い、物語は面白くなっていく。兵悟とメグルは性格も対極で、兵悟が「人を助けるため自分を窮地にさらす者」ならメグルは「自分の限界を見極めたいがゆえ自分を窮地にさらす者」といえるだろう。実は互いに認め合っていて、にもかかわらず自分の考えだけは譲らない。頑固な二人がぶつかり合い、切磋琢磨する姿も見どころだ。

この漫画は海上保安庁にはさまざまな仕事があり、スペシャリストがいること、命懸けのレスキューでの息をのむリアルな展開など海の現実が学べる。もちろん漫画なのでクスッと笑える場面も盛りだくさん。おすすめです。

海上保安庁のトッキューには受け継がれている大切な言葉があるという。「苦しい疲れたもうやめたでは人の命は救えない」。厳しい教えだが僕もこれを胸に刻んで、誰かのために努力できる人間になろうと思う。

大阪府河内長野市 谷口大輔(15)

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