鈴木誠也を動かした「カブスの熱意」 交渉の舞台裏、関係者が明かす

鈴木誠也(左から2人目)の移籍を支えた澤井芳信氏(左)、ジョエル・ウルフ氏(右から2人目)ら=米アリゾナ州(澤井氏提供)
鈴木誠也(左から2人目)の移籍を支えた澤井芳信氏(左)、ジョエル・ウルフ氏(右から2人目)ら=米アリゾナ州(澤井氏提供)

米大リーグ、カブスに広島からポスティングシステムで移籍した鈴木誠也外野手。日本人野手のメジャー1年目の契約では史上最高額となる5年総額8500万ドル(約101億2千万円)の大型契約を結んだ。鈴木とマネジメント契約を結び、米大手代理人事務所ワッサーマンとともに交渉に臨んだスポーツバックス(東京)の澤井芳信氏が、熾烈な交渉の舞台裏を明かした。

オフのメジャーは大揺れだった。米大リーグ機構(MLB)と選手会の労使交渉は、球団への課徴金(ぜいたく税)が発生する年俸総額の基準などをめぐって難航。昨年12月1日に旧労使協定が失効し、「ロックアウト」に突入した。移籍交渉も凍結され、鈴木も都内や沖縄で所属先がない中で自主トレーニングを続けざるを得なかった。

交渉凍結もオファー確信

何度も練習場所を訪れていたのが澤井氏だった。「移籍先が決まらないまま、練習をすることで(鈴木)誠也君にストレスがかかることが最大の懸念だったが、誠也君は『交渉はいつか終わる。僕は絶対アメリカでプレーする』とぶれなかった。感情のコントロールができていて、改めてすごいなと感じた」

鈴木サイドには労使交渉が妥結すれば、大型オファーが届くという確信があった。ロックアウト前にオンラインで実施したメジャー球団との面談で手応えを得たからだった。最終的に契約締結に至ったカブスをはじめ、10球団前後のオーナーやチーム編成のトップを担うゼネラルマネジャー(GM)、球団社長らとの事前交渉では、主力として期待する声が多く寄せられていた。

労使交渉が進展しない中、鈴木と澤井氏、通訳の3人は3月7日に渡米。ワッサーマンの事務所がある米ロサンゼルスに滞在することになった。到着後はワッサーマンが手配した施設を借りて調整。澤井氏は「労使交渉の先行きは渡米時点では全く見えていなかったが、アメリカに行って環境を変えることで、誠也君の気分転換になればと思った」と振り返る。

長期化の様相を呈した交渉は不安をよそに3月10日、新協定の合意に至り、移籍交渉も解禁。直後からワッサーマンで鈴木の代理人を務めるジョエル・ウルフ氏の携帯がひっきりなしに鳴った。鈴木の練習見学に訪れた際も、イヤホンをつけて交渉を進めていた。

鈴木が移籍交渉で重視した中の一つに現地での生活環境がある。「家族に安心して住んでほしいという思いと、自身の体のことを考えてのことだった」(澤井氏)。日本人になじみがあり、温暖な気候の西海岸・サンディエゴに本拠地を置くパドレスが有力な移籍候補に挙がった。

会員限定記事会員サービス詳細