「うどん県」がブロッコリーの一大産地になった秘密

日本の食卓に定着したブロッコリー。出荷量は香川県が全国2位だ
日本の食卓に定着したブロッコリー。出荷量は香川県が全国2位だ

海外から日本の食卓に定着したブロッコリーは香川県で栽培が盛んだ。出荷量は北海道に続き全国2位。コメの減反政策が本格化した時代に作付面積を拡大、有数の産地になった。その背景には、香川県農業協同組合(JA香川県)の手厚い支援があったという。

弁当の脇役でニーズ増

農林水産省の作物統計によると、令和2年産の作付面積は全国1万6600ヘクタールのうち北海道が2890ヘクタールで1位、香川県が1380ヘクタールで2位。出荷量は15万8200トンのうち北海道が1位で2万8千トン、香川県が1万4700トンで2位となっている。

北海道や長野県など寒冷地は夏秋期もので北海道での栽培時期は4~10月。秋春期ものは10月から翌年6月までで3月が収穫のピークで、香川県と愛知県、埼玉県が出荷量を激しく争っている。

葉のみずみずしさで鮮度をアピールするという。3枚残して出荷するよう指導している=香川県坂出市
葉のみずみずしさで鮮度をアピールするという。3枚残して出荷するよう指導している=香川県坂出市

香川県内でのブロッコリー栽培は昭和40年代後半、野菜品目の多様化需要をふまえ、冬も温暖で年間降水量の少ない瀬戸内海気候を生かして始まった。減反政策に直面した稲作の裏作の一つとして、県内では多度津町で栽培が始まり全域へ拡大したが、一時は安価な米国産に押されたという。

平成に入り「国産の新鮮さ、品質で対抗しよう」と、三豊市内の農家が差別化を狙って、葉を1、2枚残した形を国産の証しとして始め、鮮度を保つ氷詰め出荷を開発した。

ブロッコリーは、ビタミンCや植物性タンパク質などが豊富で栄養価の高いことが着目され、追い風となった。家庭でのお弁当需要が増え、添え物として彩りがよく、冷凍保存がきくなどの使い勝手の良さでカリフラワーなどを押さえ急速に浸透していった。近年では抗酸化・解毒作用があるスルフォラファンの含有でも注目されている。

三豊市立勝間小学校の3年生が収穫を体験。ブロッコリーを刈り取った後、葉を落として整形していく=2月14日、香川県三豊市
三豊市立勝間小学校の3年生が収穫を体験。ブロッコリーを刈り取った後、葉を落として整形していく=2月14日、香川県三豊市

夜間、早朝収穫を徹底

香川は面積が狭く、全域で気候条件や土壌環境がほぼ一定なため、一律の条件で栽培方法を共有できる。

生産農家とJAが一体となって試行を繰り返し、早生・中生・晩生・促成となる品種を使い分け、地域によって時期をずらし9カ月という長期間の収穫を可能としてきた。

気温20度以上だと品質が落ちるため、収穫から出荷までいかに低温を保つかが重要となる。朝採りは基本で、午前5~6時や日の出前の早朝採りが主流だが、農家によっては日付が変わった午前0時過ぎ、2~3時などにヘッドライトを付けて収穫を行っている。

集荷場へは農家が軽トラックで直接、中へ持ち込む。担当者がサイズや品質で選別し、食べる部分である花蕾(からい)の大きさは13センチ以上、茎の長さ17センチ以上、葉を3枚残すという基準で、見た目や大きさ、硬さなどを厳しくチェックする。ポリ袋をかぶせて高分子吸水シートを敷いた段ボール箱に、ブロッコリーを横詰めし氷を入れてふたをする。

ブロッコリーが入った段ボール箱に氷を一緒に詰めて出荷する=3月9日、香川県坂出市
ブロッコリーが入った段ボール箱に氷を一緒に詰めて出荷する=3月9日、香川県坂出市

類をみない手厚い支援

JA香川県の徹底した農家支援は出荷拡大の大きな要因に挙げられる。広域育苗センターで一括受注して全ての苗を育苗し供給する「育苗支援」、定植作業を受託し作業負担を軽減する「定植支援」、共同選果を中心にした出荷の量や時期を調整する「ストックコントロール」の3つだ。

集荷後の冷蔵保管による徹底したストックコントロールで、大型スーパーなどの注文に切れ目なく細かく安定的にこたえ続けた結果、今では出荷先の7割が首都圏となり、産地ブランドが確立してきている。

JA香川県園芸課では「農家が首都圏の市場や仲卸業者の元に出向いて担当者と直接話して細かい要望を聞き、熱心に改善する努力を続けたことが大きい」と説明する。

農家は栽培に専念でき、作付面積は平成16年に約200ヘクタールだったのが、令和では1300ヘクタール台で推移している。

栽培管理の手間が比較的少なく省力化が進み、生産拡大や新規就農の品目として選びやすい。平均年齢は60歳代超と高齢化しているが、県も農業インターン制度などで後押しし、農業法人や20、30歳代が新規参入しているという。

県の特産を子供たちに伝えようと、各地区のJAが協力し小学校などで収穫体験を行い、給食の食材として提供するなどの活動を継続的に行っている。

県野菜花き生産者研究会ブロッコリー部会の中西幸範副部会長は「先輩方の努力、工夫のたまもので市場の信頼を得てきた。ストックコントロール、全県下で品質のばらつきが少ないのが強みだ。手厚い支援で誰でも始めやすい。さらに品質を高め、評判をよくしていきたい」と話していた。(和田基宏)

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