社説検証

電力逼迫警報 各紙とも対応の遅れを批判 「原発で供給力確保を」産読

東京・新橋駅前の商業施設に掲げられた節電を知らせる案内板 =3月22日午後
東京・新橋駅前の商業施設に掲げられた節電を知らせる案内板 =3月22日午後

東京電力などの管内で電力供給が不足し、経済産業省が3月21日夜に初めて「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」を発令した。電力不足で大規模停電に発展する恐れがあるとして、家庭や企業に節電を求めた。

福島県沖の地震で火力発電所が被災し、供給力が低下したほか、22日は厳しい寒さが戻って暖房需要の増加が見込まれた。これに伴い、電力供給の余裕度を示す供給予備率が3%を下回る可能性が高まったことが、警報発令に踏み切った理由である。

ただ、発令が前日夜にずれ込んだことで、節電が浸透するのに時間がかかった。このため、主要各紙は後手に回った政府の対応をそろって批判したが、電力の安定的な供給力確保に向けた原発の活用をめぐっては論調が分かれた。

産経は「急な警報発令には疑問も残る。東電は18日夜にも電力需給が逼迫するとして節電を求めている」と指摘したうえで、「今回の警報発令は21日夜と突然だったため、大規模工場などでは操業を休止する準備ができなかった。もっと早く警報を出す体制を整える必要があった」と批判した。

読売も「警報の発令が前日夜になったことで、政府の要請が広く国民に伝わらなかったのではないか」と政府の対応に疑問を示した。そして「電力需給の逼迫が予想される時は、迅速に情報発信すべきだ」と注文した。

一方、朝日は「地震による発電所の損傷が供給にどう影響するのか、電力業界も経産省も分かりやすく示しておらず、需給逼迫は大半の利用者には寝耳に水だった」と強調し、「政府や東電は直ちに経緯を検証し、節電の呼びかけ方を一から見直す必要がある」と論考した。

毎日も「東電管内の警報発令は連休最終日の21日午後9時過ぎだった。しかも最初の公表資料には『警報』の文字がなかった」と問題視し、「このため危機感が伝わらず、22日の節電は当初、目標である10%の3分の1にとどまった」と難じた。

電力需給をめぐる構造問題を提起したのは日経だ。「電力各社の需給はここ数年、綱渡りが続いている。今回の事態を招いた構造問題に目を向け、安定供給の回復へ電力制度の総点検が必要だ」と制度改革を促した。

産経は「東電では供給力の低下が目立ち、毎冬に電力需給は綱渡りの状況にある。これを節電だけで乗り切るのは無理がある」と断じたうえで、「政府・与党は、こうした電力不足を厳しく認識し、安全性を確認した原発の早期再稼働を主導すべきである」と原発の活用を強調した。

読売も「供給増には、出力が安定した原子力発電所の活用が有効だ。政府は安全性が確認できた原発の再稼働を後押ししてもらいたい」と訴えた。日経も安全性を確認した原発の再稼働を進めるように求めた。

これに対し、朝日は「需給改善に、原発の活用を挙げる声もある。しかし、原発の稼働は新規制基準への適合や避難計画の整備が前提であり、目先の需給と直結させて議論すべきではない」とクギを刺した。毎日も「与党内には原発回帰を求める声がある。しかし、安全性への根強い不安や、放射性廃棄物の問題などを考えれば現実的ではない」と原発活用を否定した。

経産省の試算では、首都圏の電力需給の逼迫は今後も続く見通しだ。再生可能エネルギーには気象条件に左右される脆弱(ぜいじゃく)性があり、とくに悪天候に見舞われる冬場の電力不足は、再生エネの導入拡大で解決できる問題ではない。ウクライナに侵攻したロシアからの資源輸入の適否を含め、日本は今こそエネルギー調達と電力の安定供給を真剣に考える必要がある。(井伊重之)

■電力の逼迫警報をめぐる主な社説

【産経】

再生エネの脆弱性克服を(3月23日付)

【朝日】

抜本的な備えの強化を(24日付)

【毎日】

慢性化する不足に備えを(27日付)

【読売】

供給体制の強化策が不十分だ(23日付)

【日経】

安定供給の回復へ電力制度を総点検せよ(23日付)

【東京】

需給見通し甘くないか(23日付)

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