足利の山姥切再展示、コロナ禍でも2万5千人が来館

最終日、閉館のアナウンスが流れると、山姥切国広の周囲に集まった多くの女性ファンから拍手が巻き起こった=3月27日、栃木県足利市通
最終日、閉館のアナウンスが流れると、山姥切国広の周囲に集まった多くの女性ファンから拍手が巻き起こった=3月27日、栃木県足利市通

新型コロナウイルス禍の全国的イベントとして注目された栃木県足利市ゆかりの刀工・堀川国広の名刀「山姥切(やまうばぎり)(やまうばぎり)国広」の再展示を柱とする同市制100周年記念特別展「戦国武将 足利長尾の武と美-その命脈は永遠に-」(2月11日~3月27日、同市立美術館)の最終的な入館者数が2万5000人で、経済効果も4億8000万円に上ることが同市のまとめで分かった。女性ファンを中心に根強い刀剣ブームを裏付けている。

最終日となった3月27日午後6時半、山姥切国広の展示ケース周辺は女性ファン約100人で埋め尽くされ、閉館のアナウンスが告げられるとともに大きな拍手が巻き起こった。

「山姥切は本当に魅力的な刀。見るたびに新たな発見があって…」。期間中、計12泊、20回は鑑賞したという神奈川県の40歳代女性は帰り際、名残惜しそうに再度、名刀に目を向けた。

45日間の会期となった同展の入館者数は2万5587人、入館料収入も2000万円。同美術館の令和3年度の総入館者数も前年度の3倍強に当たる4万人となり、新型コロナ禍で入館者減に悩む中で「干天の慈雨」に。通常200~300冊とされる図録の販売数も1万2000冊以上と桁違いで、史跡足利学校の入館者も前年同期比3倍以上の2万4000人を数えた。

「山姥切効果」は地元経済も潤した。入館者数こそ5年前の山姥切国広初展示からは3割減となったが、同市が試算した経済効果は前回比6000万円増の4億8000万円。同市を訪れた1人当たりの支出額は7000円増の1万9000円に跳ね上がった。

要因とされるのは、46から95に増えた協力店舗における、充実したオリジナルグッズの販売増だ。足利通2丁目商業会会長の浜田陽一さん(63)は「各店舗が工夫を凝らし、全体的に潤ったのでは。背景に初展示以降、足利ファンが根付いたこともある」と話す。

もちろんベースには、ファンの足を運ばせた山姥切自体の〝引力〟がある。

「個人蔵の刀で、見逃したら2度とみられないと思って」。大阪府から駆け付けた20歳代女性は多くのファン心理をこう代弁する。

一般に美術品は美術館や自治体所蔵の場合は定期的に展示がなされるが、個人所蔵の美術品などは展示機会が限られる。山姥切国広も刀剣ブームが続く中、5年前の初展示以降は非公開で「秘仏公開のよう」(都内の30歳代女性)と評される希少性が、ファンの熱意に拍車をかけた。

期間中に発売されたゲームソフト「刀剣乱舞無双」が週間売り上げ1位を記録するなど、根強いゲーム人気も後押しする。

一方、同市が「山姥切効果」の一つに期待した足利の歴史文化資源のPRといった面では課題が残った。

例えば同市が企画したスタンプラリーでチェックポイントの一つだった足利長尾氏のぼだい寺のある長林寺(同市西宮町)。連日、多くの刀剣ファンが訪れたが、ほとんどは本堂でポイントチェックを終えると同寺を後にした。

期間中、ボランティアで解説に当たった郷土史家の小林一行さん(76)は「長尾氏歴代墓所まで足をのばしたのは2割くらいで、そのうち熱心に耳を傾けてくれたのは1割ほどでは」と振り返った。(川岸等)

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