「私の心は絶望の淵に」 本屋大賞の逢坂さん、ウクライナ侵攻に言及

2022年本屋大賞を受賞し、あいさつする「同志少女よ、敵を撃て」の作者の逢坂冬馬さん=6日午後、東京都港区(鴨川一也撮影)
2022年本屋大賞を受賞し、あいさつする「同志少女よ、敵を撃て」の作者の逢坂冬馬さん=6日午後、東京都港区(鴨川一也撮影)

「2022年本屋大賞」を受賞した「同志少女よ、敵を撃て」。第二次世界大戦の分岐点となった独ソ戦を舞台に、狙撃兵となったソ連の少女を描いた冒険小説だ。6日の授賞式で、作者の逢坂冬馬さん(36)は、受賞の喜びを口にする一方で、「私の心はロシアによるウクライナ侵略が始まった2月24日以降、絶望の淵にあります」と複雑な胸中を語った。

受賞作の主人公は18歳の少女、セラフィマ。故郷の村が独軍に襲われ、赤軍の女性兵士、イリーナに救われる。母を殺した独軍の狙撃兵と、母の遺体を焼き払ったイリーナへの復讐(ふくしゅう)を誓い、女性狙撃兵訓練学校に入り、前線へ身を投じる。激しい市街戦が行われたスターリングラードの攻防も描かれ、戦場の暗部や命の価値を問いかけた作品だ。

「暴力が嫌いで戦争も嫌い。否定する根拠を持つために、小説で個々の兵士の内面に迫る形で暴力を描きたかった」という逢坂さん。戦争を通じてたやすく変わってしまう人間の内面や、価値観の転換をもたらす戦争の惨禍を描いたという。

それだけに、ロシアのウクライナ侵攻以降、暗澹(あんたん)とした気持ちに陥っていたが、反戦を表明する文化人らやウクライナへ心を寄せるロシア国民の報道に接し、「(反戦の思いは)依然として小さな声ですが、その声をできるだけ忘れないように、増幅していきたい」と平和への思いを語った。

物語では、復讐心から狙撃兵となったセラフィマが葛藤し、戦争によって価値観を揺さぶられる様を描いた。逢坂さんは「セラフィマがこのロシアを見たならば、悲しみはしても、おそらく絶望しない。私も絶望するのはやめます。戦争に反対し、平和構築のための努力をします。それは、小説を書く上でもそれ以外の場面でも変わりありません」と力強く語った。

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