ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、国連安全保障理事会の会合でオンライン演説し、「第二次大戦以来、最も恐ろしい戦争犯罪」がロシア軍によってウクライナで行われていると訴えた。ゼレンスキー氏は、首都キーウ(キエフ)近郊のブチャなど露軍が占領していた地域での民間人虐殺を強く非難し、安保理が「ロシアの完全な責任」を追及するよう求めた。
会合はロシアによるウクライナ侵攻をめぐって開かれた。国連のグテレス事務総長も演説し、ブチャで殺害された人々の恐ろしい映像を「生涯忘れない」と発言。国際人道法や国際人権法への「重大な違反だ」とし、責任追及のための「独立した調査」を求めた。
グテレス氏はまた、「安保理常任理事国のロシアが国連憲章に違反してウクライナに本格的な侵攻を行った」と名指しでロシアを批判。常任理事国の不一致で安保理が行動を起こせずにいることについて「憤りを抑えることができない」と述べた。
ゼレンスキー氏が4日に明らかにしたところでは、ブチャでは300人以上が露軍に拷問を受けたり、殺害されたりした。ゼレンスキー氏は「犠牲者はかなり増えるだろう」とみている。ウクライナのベネディクトワ検事総長は、ブチャに近接するボロディアンカで最も大きな人的被害が確認されたとしている。
ブリンケン米国務長官は5日、ワシントン郊外で記者団に対し、ブチャでの民間人殺害は「不良部隊がでまかせにしたことではない」と指摘。「殺害し、拷問し、残虐行為を犯すという計画的な軍事行動だ」と断じた。
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は4日の記者会見で、露軍がキーウ近郊からベラルーシへ「撤退する途上にある」とし、数万人規模の部隊を東部地方に配置する計画だとの見方を示した。米政権が「撤退」の表現を使ったのは初めて。
露軍は5日もウクライナ東部のハリコフやマリウポリ、南部オデッサなどで攻撃を続けた。(ニューヨーク 平田雄介、ワシントン 渡辺浩生)