「廃虚には命が宿る」 春の院展最高賞を受賞した須田さん

「迷わず、もう絵を描き続けます」と話す須田健康文さん=山形市の自宅アトリエ(柏崎幸三撮影)
「迷わず、もう絵を描き続けます」と話す須田健康文さん=山形市の自宅アトリエ(柏崎幸三撮影)

山形市 須田健文(すだ・たけひろ)さん(45)

日本美術院の第77回春の院展で最高賞の春季展賞を受賞した。山形県上山市に残る廃虚を描いた受賞作「虎落笛(もがりぶえ)」は、山形県の冬の厳しさを知る人なら、そのリアリティーが伝わってくるはずだ。

自身の主要テーマ「廃虚」から、上山市沢丁に残る廃虚を選び、昨年末に再訪した。記憶にあった建物の土壁は落ち、朽ち果て、全くの廃虚になっていた。その光景を見て感じたのは「美しさ」だった。

「人の作りしものに自然の力が加わり、人工物ではない美しさを感じた。それが廃虚なら、命が宿っているなら、違う何かに生まれ変わる」

廃虚から感じたのは美しさだけではない。廃虚には再生を待つ「命」も感じた。新たなものに生まれ変わろうとするエネルギーと言い換えてもよいかもしれない。「廃虚は再生を待っている。そう、感じた。輪廻(りんね)といえばよいのでしょうか」。そんな思いを作品にした。

山形県河北町出身。2歳でクレヨンなどで絵を描き始め、母親の加代子さん(71)の顔を描いた作品が褒められ、広告の裏紙などを見つけては絵を描いていたという。ファミコン好きで、ゲームの背景画を描くグラフィックデザイナーを志し美大を受験、進学した山形市の東北芸術工科大で日本画と出合う。同大草創期の日本画コースで番場三雄、松本哲男両氏らに日本画を学んだ。

「賞を取り有名になりたいという野心がこれまではあった。だが今回は違った。支えてくれた日本画家の妻や父母、恩師に感謝する思いで描いた。自分ではわからないが、周囲からこれまでの作品とは違うといわれる」とほほ笑む。

受賞作のタイトル「虎落笛」は、筋違いに組んだ竹に冬の烈風が吹き付けたときに鳴る、「ヒュー、ヒュー」という音から取った。廃虚から聞こえる物悲しい虎落笛。「その音に、会社員として働きながら日本画を描き続ける日々に限界を感じる自分が重なったのかもしれない」という。

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