北川信行の蹴球ノート

監督交代の神戸…新指揮官が求めるポジティブシンキング

報道陣の質問に答える神戸の槙野(C)VISSEL KOBE
報道陣の質問に答える神戸の槙野(C)VISSEL KOBE

「成績低迷→監督交代」を繰り返してきた歴史のあるヴィッセル神戸。J1リーグ戦でクラブ史上ワーストとなる開幕から8戦未勝利(4分け4敗)となっている今回は、監督交代にあわせ、J2東京V監督時代のパワハラ行為により1年間の公認S級資格停止処分を受けたばかりの永井秀樹氏を強化、育成部門の総責任者であるスポーツダイレクター(SD)に登用したことでも、サポーターを中心に物議をかもした。元スペイン代表のアンドレス・イニエスタをはじめとした大型補強で注目を集め、「アジアナンバーワン」を目標に掲げるJリーグ屈指のビッグクラブは、どうV字回復を図っていくのか。

大事なのはメンタル

報道陣の質問に答える神戸のリュイス監督(C)VISSEL KOBE
報道陣の質問に答える神戸のリュイス監督(C)VISSEL KOBE

4日にオンラインで行われた、6日のアウェーFC東京戦に向けた記者会見。今季加入したばかりの元日本代表DF槙野智章は「チームは新しい監督の下、いいフィードバックができ、勝つために準備している。敗戦をネガティブにとらえすぎず、やっていきたい」と強調した。2020年に初挑戦のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で4強入りし、昨季のJ1ではクラブ史上最高位の3位にチームを導いた三浦淳寛前監督の3季目だった今季は新型コロナウイルス禍でキャンプ地が変更となったり、故障者が続出したりする不運もあり、なかなか勝ち星を得られず、3月20日に契約解除。翌21日に、今季から新設した、若手育成に特化した「ヤングプレイヤーデベロップメントコーチ」として招聘(しょうへい)したスペイン人のリュイス・プラナグマ・ラモス氏の監督就任が発表された。

リュイス監督の初戦となった4月2日の京都サンガ戦は先制点を奪いながら、カウンターから失点を重ねて1-3の敗戦。それでも、新指揮官は「多くの局面で相手よりも上に立つことができた。結果以上にいい内容の試合ができたと思う」と手応えを口にする。

その上で「一番大事なのはメンタルのところ。チームとしての勝ちたいという気持ちは伝わっている。試合を勝ち切るのが重要」と訴える。「局面、局面を流れにする。シーン別で良かったことを時間帯にしていくのが大切」と補足するのは元日本代表DFの酒井高徳。「(京都戦では)縦の速さを意識した攻撃だとか、守備のブロックをしっかりつくったりだとかはよかった。結果がついてこないときには、よくないことに目がいきがち。目をそむけるのも違うと思うが、よい面に意識を向けることで、リュイス監督が落とし込んできたことが、それでいいんだという指標になる。今は前を向く時期。反省は後からいくらでもできる」と前向きになる必要性を口にした。

個別ミーティングで対話重視

報道陣の質問に答える神戸の酒井(C)VISSEL KOBE
報道陣の質問に答える神戸の酒井(C)VISSEL KOBE

母国のスペインで10代のころから指導者を志し、多くのクラブを渡り歩いて育成年代のチームを中心に指揮を執ってきたリュイス新監督は「クラブのベストバージョンを引き出す。ゲームのあらゆる局面を支配していきたい」との高い理想を掲げ、選手のコミュニケーションや対話を重視した指導を実施。個別ミーティングを行うなどして、選手の特性や能力の把握に努めている。「たとえばミーティングの中では、チームの中でうまくいったことを選手に伝えている。1対1のミーティングで選手の成長に対する意欲は見えている」とリュイス新監督。

そうした手法を槙野は自身の個別ミーティングを踏まえた上で「チーム全体の団結を大事にする監督。ポジティブな空気を取り入れようとしているのをすごく感じる。個性を理解して何をしてほしいかを伝えてくれている」と説明する。

素質が表れるポジションで

ただ、V字回復を狙う上で故障者が多いのは悩みの種だ。チームが発表した故障者の情報は次の通り。

【3月2日】FW武藤嘉紀(左膝内側側副靭帯(じんたい)損傷=全治約8~10週間・受傷日から)

【3月10日】FW藤本憲明(右大腿直筋近位腱断裂=全治約6~7カ月・手術日から)

【3月11日】MF佐々木大樹(左ハムストリング肉離れ=全治約10~12週間・受傷日から)

【3月15日】MFセルジ・サンペール(右膝前十字靱帯損傷=全治約8カ月・手術日から)

さらに、3月下旬にU-21(21歳以下)日本代表に選ばれ、アラブ首長国連邦(UAE)でのドバイカップU-23(23歳以下)に出場していたFW小田裕太郎も負傷離脱。特に前線の選手に故障者が多いのが分かる。

未勝利が続くJ1リーグに加え、4月16日にはタイでのACLの1次リーグが初戦を迎える。中2日の間隔で6試合を戦う強行日程で、現状ではやり繰りにかなり苦労することになりそうだが、リュイス監督は「故障者が多く、ほしい選手全員が使えるわけではない。通常のポジションじゃなくてもできるようにプランニングする必要がある。通常のポジションではなくても、選手の素質が表れるところで起用していきたい」と話す。言葉通り、京都戦では左サイドバックが本職の初瀬亮が縦への突破力を買われて右ウイングのポジションを務め、先制点を奪った。

そういった選手起用も低迷脱却の鍵を握る。

まずは泥臭くリーグ戦の1勝を

最後に再浮上に向けた槙野と酒井のコメントを紹介する。

「結果が出ていないし、納得のいくシーズンが送れていないのは確か。同じ方向を向く上では非常に大切な時期。ただ、勝てていないが、下を向くようにはなっていない」という槙野は「この状況をいかに楽しめるか。自分たちの戦いにもっていけるようにまとまることが重要」と力を込める。酒井は「(主な選手の顔触れがあまり変わっていない中で)慣れが慢心になっていないか。チーム一丸をもう一度思い出さなきゃいけない。一度なくなったものを取り戻すのも、取り戻したものを維持するのも簡単じゃない。チームのためにしっかり走る、しっかり戦う。ボールがなくても、できることはたくさんある。つらい、きつい、苦しいときにどれだけ踏ん張れるか。きれいじゃない勝ち方も今のチームには必要だと思っている」と話した。

「試合に勝つことにフォーカスするのがすべてだと思っている」とリュイス監督。まずは、泥臭くとも、1勝を挙げることが、チームを変貌させることにつながる。

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