「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

矢野監督の解任も選択肢、球団首脳は今こそ英知の結集を

リーグワーストの開幕9連敗を喫し、ベンチで腕組みする阪神・矢野監督=4月3日、東京ドーム
リーグワーストの開幕9連敗を喫し、ベンチで腕組みする阪神・矢野監督=4月3日、東京ドーム

「矢野解任」が究極の打開策ならば、阪神球団は迷わず断行すべきです。泥沼の開幕9連敗から逆襲するためのあらゆる手段は現場任せにせず、阪神球団首脳が英知を結集して打って出なければなりません。3月25日の開幕ヤクルト戦(京セラドーム)で8対1から大逆転負けを喫して以来、矢野阪神は〝無間地獄〟を漂流する9連敗。3日の巨人戦(東京ドーム)に5対9で敗れた試合後、矢野燿大監督(53)は「(打開策は)俺も浮かばない」と下を向きました。春季キャンプ前日に今季限りでの退任を発表した指揮官の言動に批判が集中していますが、窮地を脱出する浮上プランは現場だけが考えることではありません。指導体制の刷新、新たな補強策を含めた全ての打開策は球団オーナー、球団社長らの手に握られているのです。

■投打の歯車かみ合わず

まさに「泥沼」の表現がぴったりとくる開幕9連敗です。3日の巨人戦(東京ドーム)も先発のガンケルが初回裏、中田に満塁弾を食らい、後はリリーフも打たれて惨敗。3月25日の開幕ヤクルト戦(京セラドーム)で8対1から継投策の失敗で大逆転負けを喫して以降、投打の歯車は全くかみ合わず、ついに3連戦3カード、ひとつも勝てない…という〝無間地獄〟を漂流です。

ここまでの9試合で見えてきたものはさまざまです。まず投手陣は昨季42セーブをマークした守護神スアレスの抜けた穴が大きく、勝ちパターンの継投策はいまだ見えてきません。守護神失格の新外国人カイル・ケラー投手(28)は2軍降格。矢野監督は新たな守護神に若手の湯浅京己投手(22)を指名しましたが、まだ僅差のリードで九回に登板…という場面はなく、本当に務まるのかは未知数です。

リリーフ陣の不安は投手陣全体のリズムを狂わせ、9試合消化時点でのチーム防御率は信じられない5・85。12球団ワーストですね。投手陣が少ない得点を守り切って勝つ〝阪神パターン〟は消え去りました。

さらに打線も4番・佐藤輝明内野手(23)の背後を打つ5番、6番が定まらずに打線の得点能力は上がってきません。9試合でのチーム得点は29。首位の巨人は50点です。さらに3番のジェフリー・マルテ内野手(30)が右足の故障で1軍登録を抹消。平田2軍監督は「かなり時間がかかる」と話しています。

現状の投打を見るならば「ポジティブに…」と言われても、なかなか戦局を打開できる方策が見当たらないのです。なので、9連敗を喫した直後、矢野監督は「(打開策は)まあ、ちょっと俺も浮かばないんで」と話すしかなかったわけですね。本拠地・甲子園球場がそれこそ神風を吹かせてくれることを祈るばかりなのですが、チーム浮上の方策は何も現場だけが頭をかきまわして、ひねり出すものではないでしょう。ここで一番、大事なことは阪神球団が一丸になって、さまざまな打開策を練り上げ、それを実行することです。まだシーズン143試合のうち9試合を終えただけです。時間はタップリとあるのですから、「(打開策が)浮かばない」矢野監督に代わり、今こそ球団首脳が打開策を現場に授けることが必要です。

■問われる新球団社長の手腕

阪神球団の藤原崇起オーナー(阪神電鉄本社会長)や、今年1月1日付で球団社長に就任した百北幸司球団社長、さらに4月1日付で球団副社長に就任した粟井一夫副社長らが英知を結集して、打開策を練り上げ現場に策を授けるべきでしょう。

百北新球団社長は社長就任の記者会見で「歴史と伝統のある阪神タイガースの社長という大変重責のある職を拝命し身の引き締まる思いです。阪神タイガースがファンの皆様と最高の夢と感動を分かち合うことができますよう尽力してまいります。リーグ優勝、そして85年以来の日本一を目指して、誠心誠意がんばって参りたいと思っています」と熱弁しました。今こそ、その心意気を示す時です。ピンチはチャンスといいますね。球団社長に就任していきなりの大ピンチこそ、新球団社長の手腕を発揮できる大チャンスと捉えるべきですね。

あらゆる角度からチーム低迷の原因を突き詰め、将来へのビジョンを描きながら、打開策を実行すべきです。聖域なきチーム改革を練るならば、あらゆるプランが浮上するでしょう。まず、戦闘現場の士気を上げるためには、矢野監督ら首脳陣と会談し、球団オーナーや社長が直接、げきを飛ばすことも考えるべきかもしれません。

あくまでも、ひとつの打開策の候補ですが、1月31日の春季キャンプ前日の全体ミーティングで「俺の中で今シーズン限りで退任しようと思っている」と衝撃の退任表明を行った矢野監督について、退任表明がチーム低迷の原因と見るならば「指揮官の交代」も躊躇(ちゅうちょ)すべきではないでしょう。監督を代えて、チームの雰囲気がガラリと変わり、浮上するのであれば即座に断行すべし…です。

ネット裏の多くの評論家が「あの退任表明で今年のタイガースは勝てない」と予想し、蓋を開ければ指摘通りの開幕9連敗…。甲子園球場での本拠地6試合で事態が好転しなければ、最大の戦犯は指揮官そのものの言動でしょう。ならば、来季以降のチーム造りへの悪影響を考えた上でも、指導体制の刷新は考慮しなければならないタイミングがおのずとやって来るはずですね。

■戦力補強も迅速に

さらに戦力補強も手を緩めることはないはずです。折しも、シンシナティ・レッズの秋山翔吾外野手(33)が4日、開幕ロースターから外れました。残念ながらコラム(鬼筆のスポ魂・産経新聞1日夕刊「打撃フォーム改造結果出ず、秋山が正念場」)で書いた通りの結果となってしまいましたが、低迷するタイガースには格好の人材となるかもしれません。秋山は今季が3年契約(総額約23億円)の最終年です。今季の年俸約7億円はマイナー行きを拒否し、フリーエージェントになったとしてもレッズが支払い続けます。なので、獲得するには巨額資金は必要ありません。

メル・ロハス・ジュニア外野手(31)が期待外れでスタメン落ちが続いていますね。マルテも故障で2軍落ち。打線は近本、中野の1・2番コンビと佐藤輝、大山の4・5番、それに糸井だけが頼りの状況です。西武時代の2015年に日本プロ野球最多安打記録の216安打を放った秋山がもし加入すれば、日替わり状態の3番を埋めることができます。オープン戦で出場し続けていた秋山はすぐに使えます。未知数な新助っ人獲得に動くよりも、よほど計算できます。大リーグで苦しんだのは高速で微妙に変化する球質に対応できなかったわけで、日本に戻ればしっかりと対応するでしょう。体調には何ら問題はありません。

とにかくチームの現状打開を現場首脳陣任せにせずに阪神のオーナー、球団社長ら幹部は早急に動くべきです。「ファンのために、ファンに夢と感動を…」と言ったのです。今は失意と落胆しかファンに与えていませんよ。きょう5日からの甲子園球場6試合の結果によっては、阪急阪神ホールディングス首脳も黙っていないでしょう。矢野監督も球団オーナー、球団社長も「剣が峰」という立ち位置は同じですね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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