ベイスターズの「青い世界」が高級ホテルに出現 横浜で始まった「ブルー・オーシャン戦略」

宿泊客は横浜DeNAベイスターズの世界を堪能できる=横浜市西区の横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(高橋天地撮影)
宿泊客は横浜DeNAベイスターズの世界を堪能できる=横浜市西区の横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(高橋天地撮影)

長引くコロナ禍で逆風にさらされるホテル業界に、特定層の顧客をターゲットにした「コンセプトルーム」を設置する動きが広がっている。横浜市の高級シティホテル「横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ」はプロ野球・横浜DeNAベイスターズとの共同企画で、チームのグッズなどで彩られた「コンセプトルーム」をオープンした。横浜スタジアムへ応援に駆け付ける全国のファンだけでなく、地元の熱烈なファンの利用も当て込む。練られた「ブルー・オーシャン戦略(競合相手が少ない需要を狙う)」として注目される試みだ。(高橋天地)

ベイスターズ・ブルーの客室

横浜駅西口にそびえる横浜ベイシェラトンホテル。ベイスターズの「コンセプトルーム」は21階に設けられた。扉を開けると、ソファに座る球団の人気マスコット、DB.スターマンとDB.キララの特大サイズのぬいぐるみがお出迎え。壁には平成10年に38年ぶりのセ・リーグ優勝と日本一をたぐり寄せた石井琢朗選手ら「マシンガン打線」の主力選手たちの直筆サイン入りユニホームが飾られている。

横浜DeNAベイスターズの人気マスコットの巨大なぬいぐるみが部屋の入口でお出迎え=横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(高橋天地撮影)
横浜DeNAベイスターズの人気マスコットの巨大なぬいぐるみが部屋の入口でお出迎え=横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(高橋天地撮影)

部屋は全体が球団カラーのブルーで彩られた〝ベイスターズワールド〟だ。シーツやバスタオル、バスローブ、クッション、スリッパはすべて球団ロゴ入り。またフロントにモーニングコールを頼んでおけば、三浦大輔監督や人気選手のボイスメッセージを内線電話で流してもらえる。まさにファン垂涎のサービスが、ここにはある。

天気がよければ富士山も望めるこの部屋の宿泊料金は1室2人利用、1泊朝食付きで3万6千円から。観戦チケット付きプランは4万1千円からで、週末と祝日はほぼ予約が埋まっているという。

高級ホテルの苦戦

平成10年のオープン以来、みなとみらいや中華街、山下公園、外人墓地など、横浜市内の観光を支えてきた横浜ベイシェラトンホテルにもコロナ禍の波が押し寄せている。安価なビジネスホテルの台頭という全国的な傾向も重なり、苦戦が続く。同ホテルセールス&マーケティング部の大滝直子さんは「内外からの宿泊客が激減し、横浜市内のどのシティホテルも有効打を放てずにいる。新規顧客を開拓すべく新しい集客戦略が求められるようになった」と話す。

コンセプトルームのバスルームに備え付けの横浜ベイスターズのロゴ入りタオルなど=横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(高橋天地撮影)
コンセプトルームのバスルームに備え付けの横浜ベイスターズのロゴ入りタオルなど=横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(高橋天地撮影)

苦境をどう乗り越えるか。白羽の矢を立てたのが地元で愛されているベイスターズだ。球団の「コンセプトルーム」があれば遠方からの宿泊客だけでなく、地元ファンも宿泊してくれるのではないか。「ベイスターズは大勢の地元野球ファンから愛されている。ファンが喜ぶサービスを企画すれば、地元の方が宿泊してくれる動機付けになるのでは」と大滝さん。

この思いにベイスターズが応じ、「コンセプトルーム」が実現した。横浜DeNAベイスターズ営業部の白井貴志さんも「宿泊してもらうことで、新しい価値を提供できればうれしい」と期待を寄せている。

ブルー・オーシャン戦略

こうした特定層の需要を取り込む「コンセプトルーム」は、全国のホテルに広がっている。鉄道ファンをターゲットに解体された車両の運転席などを室内に再現したホテルや、パンダやオオサンショウウオなど立地の特色を生かしたコンセプトルームで集客をもくろむホテルもある。

またこの春には千葉県浦安市舞浜に、アニメ映画の世界に宿泊できるコンセプトホテル「東京ディズニーリゾート・トイ・ストーリーホテル」が開業する予定。映画「トイ・ストーリー」シリーズをテーマに、青い空や白い雲の壁紙で彩られた客室はシリーズ第1作に登場する人気キャラクターの部屋を題材にしたという。

こうしたトレンドの中で誕生した横浜ベイシェラトンホテルとベイスターズとのコラボについて、『業界破壊企業』の著者で、ビジネス・ブレークスルー大学経営学部の斉藤徹教授(経営学)は、「練られたブルー・オーシャン戦略だ。無消費の顧客に注目し、横浜でしか提供できない価値を組み合わせ、顧客の事前期待を上回る情緒価値を提供したことで競合のないイノベーションを生み出した」とした。

バスルームには横浜DeNAベイスターズのロゴ入りガウンやタオルも備え付けられている=横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(高橋天地撮影)
バスルームには横浜DeNAベイスターズのロゴ入りガウンやタオルも備え付けられている=横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(高橋天地撮影)

ホテル業界の今後について、斉藤教授は「成熟社会において『なんとなく売れるだろう』的なサービスはまず失敗する。限定された顧客に唯一無二のアハモーメント(ときめき)を提供し、ファンベースを広げていく。横浜ベイシェラトンホテルの試みはホテル業界の生き残りを示唆した事例といえるだろう」と話している。

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