iPS角膜移植 3~4年後実用化へ 阪大が臨床研究完了

iPS細胞から作製した角膜の細胞を移植する臨床研究について報告した西田幸二・大阪大教授(右)ら=4日、大阪府吹田市(伊藤壽一郎撮影)
iPS細胞から作製した角膜の細胞を移植する臨床研究について報告した西田幸二・大阪大教授(右)ら=4日、大阪府吹田市(伊藤壽一郎撮影)

人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った目の角膜の細胞を、角膜の病気で視力をほぼ失った患者に移植して治療する世界初の臨床研究を進めていた大阪大の西田幸二教授らのチームが4日、予定していた患者4人全員について、手術と1年間の経過観察を終え、計画が完了したと発表した。いずれも重い拒絶反応などはなく安全性が確認され、症状が改善して視力も回復したという。今後は企業と治験を行って健康保険が使える標準医療としての適切性を検証する。

西田教授は4日、阪大で記者会見し「世界初の革新的な臨床研究で良好な結果が得られ、実用化へ大きく前進した。期間約2年の治験を今年か来年に企業と始め、3~4年後の実用化を目指している」と話した。

対象は、角膜の最も外側の上皮という部分に障害が生じ角膜が濁る「角膜上皮幹細胞疲弊症」という病気で視力をほぼ失った30歳代~70歳代の男女4人。健常者の血液から京都大が作製し備蓄していたiPS細胞から角膜の細胞を作製し、培養して厚さ0・05ミリの円形のシート状に加工し移植する手術を令和元年7月、同年11月、2年7月、同年12月に阪大病院で行った。それぞれ手術後1年間、経過を観察した。

阪大によると、最初の2人は拒絶反応を防ぐため免疫抑制剤を使用し、後半の2人は使用しなかったが、いずれも拒絶反応や腫瘍化はみられなかった。角膜の濁りが低減し、移植とは無関係に他の目の病気を発症した1人を除き、3人は視力が顕著に回復。眼鏡などの併用で、視力は最高0・7まで向上した。

角膜は目の中央にある直径約11ミリ、厚さ約0・5ミリの透明な膜で、物を見る際のレンズの役割を担う。濁ると視力が低下し、失明につながる。角膜上皮幹細胞疲弊症の重症患者は国内で数百人程度と推定されているが、唯一の治療法である角膜移植は提供者が慢性的に不足しており、拒絶反応が起きることが多いなどの課題がある。だが、iPS細胞を使えば提供者不足を解消できる可能性がある。

iPS細胞を使う再生医療研究は目の病気のほか、がん、心不全、脊髄損傷、パーキンソン病、再生不良性貧血などで移植手術が実施されている。

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