楽天モバイルは4日、KDDI(au)から回線を借りるローミング(乗り入れ)の見直しを全都道府県で開始したと発表した。ローミングの解消は自前回線でサービスを提供する携帯大手としての独り立ちに必須で、大幅な赤字が続く収益の改善にもつながる。ただ、電波がつながりにくいという弱点を抱えたままでは顧客の不満も根強く、楽天グループの総力を挙げたサービス向上が求められる。
楽天モバイルが4月から新たにローミングの見直しを始めたのは岩手、山形、山梨、和歌山、島根、高知、長崎、鹿児島の8県。楽天とKDDIは楽天の人口カバー率が70%を超えた都道府県で見直しを始める取り決めをしており、楽天の自社回線が全国にある程度整備された節目となる。
楽天によると令和4年2月時点で、基地局の開設数は4万局を超えた。全国の人口カバー率は96・7%で、当初の計画を4年前倒ししているという。
ローミングは、新規参入した楽天が全国に通信網を整備するまで、携帯電話で通話できない地域をなくすための暫定的な措置で、終了時期は8年3月までとしている。楽天の基地局が設置されていない地域や地下鉄、新幹線、屋内などをKDDIの通信網がカバーしてきた。
楽天がローミングの解消を急ぐのは、収益への影響が大きいからだ。KDDIへ支払う料金はデータの通信量が多いほど高額になる。これまでの総額は1千億円以上に上るとみられる。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は再三「ローミングコストがあまりにも高い」とこぼしていた。顧客を獲得しても、コストが増加し打ち消しあう状態の解消を優先した。
一方、大型の商業施設など一部ではローミングを継続する。千葉県と神奈川県では、今年3月としていたローミングの全面終了の延期を決めるなど、完全な自立にはまだ課題も多い。
屋内や物陰でも電波が届きやすい「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯を持たない楽天は通信の安定性で、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクの3社に後れをとる。先行してローミングを見直したエリアでは「通信状況が悪くなった」という顧客の声も上がっていた。
楽天は、通販サイトやファッション関連サービスの加盟店、協力関係にあるぐるなびに登録している飲食店に屋内用の小型基地局を設置するなど、今後〝総力戦〟で真の独り立ちを目指す。(高木克聡)