TOKYOまち・ひと物語

被害者に寄り添う「新あすの会」事務局長、米田龍玄弁護士

犯罪被害者や遺族への支援強化の必要性を訴える米田龍玄弁護士=3月23日、東京都千代田区(塔野岡剛撮影)
犯罪被害者や遺族への支援強化の必要性を訴える米田龍玄弁護士=3月23日、東京都千代田区(塔野岡剛撮影)

ある日突然犯罪に巻き込まれたり、犯罪で大切な人を奪われてしまう-。米田龍玄(りょうげん)弁護士(41)=岡村綜合法律事務所所属=は、そんな人々の支援に奔走している。一度は解散し、3月26日に再発足した「新全国犯罪被害者の会(新あすの会)」の事務局長に就任した。「苦しんでいる人に、さらなる苦しみを与えてはいけない」と、被害者に寄り添う姿勢を貫く。

司法試験に合格し、法曹界に足を踏み入れたのは平成15年。「当初は犯罪被害者支援に特別な関心があったわけではなかった」が、現在の会の前身「あすの会」で代表幹事などを務めた岡村勲弁護士(92)との出会いが転機となり、支援活動に足を踏み入れた。

そこで見えてきたのは、理不尽な事件自体はもちろん、裁判や賠償などで二重、三重に苦しむ被害者や遺族の悲痛な現実だった。

どう支援したら

千葉県柏市で26年3月、男性が刺殺された通り魔事件の遺族からは、「犯人を極刑にしてほしい」という悲痛な訴えに直面した。「どう支援したらいいか、考えさせられた。遺族と話をする中で、死刑制度の必要性を痛感した」という。

神奈川県座間市のアパートで29年、男女9人が男に殺害された事件では、捜査関係者から事件に巻き込まれたことを知らされた直後の遺族に接した。「あまりにも残酷な現実を突きつけられた遺族の慟哭(どうこく)を目の当たりにした。いまだに、どう言葉をかけたか思い出せない」

事件をめぐる報道で遺族が傷つくことがないよう、対応に当たることもある。「被害者の実名や顔写真の報道の在り方にも疑問がわいた。こうした報道は、遺族が了解した場合に限ってもいいのでは」とも語る。

30年から令和元年にかけて、東京弁護士会の犯罪被害者支援委員会で委員長を務めた。現在も司法修習生らに犯罪被害者・遺族への弁護活動について講演することもあるが、「『気持ちが分かる』といったことを軽々しく言ってはいけない。余計なことを言わず、向こうから話し始めるのを待つべきだ」。自身の経験を後進に伝えている。

弁護士会では平成25年から、警視庁などから支援が必要な被害者、遺族の相談希望についての情報を受ける制度を運用している。件数は年々増加しているといい、「事件に遭ってしまっても、すぐに弁護士に相談するという判断にはなりにくい。こうした制度が支援につながることは重要だ」と強調する。

経済的支援拡充を

新あすの会が掲げる大きなテーマは、国による被害者や遺族への経済的な支援の拡充だ。被害者に対する給付金制度もあるが、十分ではない。「事件に巻き込まれた人が病院で治療などを受ける場合、治療費や薬代などの負担もなくしていきたい」と意気込む。

活動を続ける根底にあるのは、これまでの経験で培った思いだ。

「犯罪に遭うということは、理不尽に個人が尊重されなかったということの典型。どんな事情があろうと、犯罪に巻き込まれる理由にはならないはずだ」

苦しむ人の声に耳を傾け、知恵を絞る。それこそが、弁護士の本分だと考えている。

(塔野岡剛)

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