夏の参院選改選1人区で野党候補一本化を呼びかけている立憲民主党が難題に直面している。共産党は従来通り安全保障関連法への反対を軸にした共通政策をまとめた上で共闘すべきだと主張。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻などを受けて国防の重要性が叫ばれる中、安保関連法に対する批判は支持を得にくいとの見方も立民内にはある。
「現時点では候補者調整の申し入れを行ったということだ。政策の具体的な話をこちらからは提案していない」。立民の泉健太代表は1日の記者会見で、候補者調整に当たり安保法制に対する見解と対応を問われたものの、明確な回答を避けた。
野党は最近の国政選挙で候補者を一本化する際、安保関連法の廃止を求めるグループ「市民連合」が仲介する形で、共通政策を締結してきた。昨年秋の衆院選の際にも「安保法制などの法律の違憲部分を廃止し、コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する」などとする政策を共有した。
安保関連法の成立を機に野党共闘の強化を訴え続けてきた共産は「反安保法制」の旗は降ろしたくないのが本音だ。志位和夫委員長は「安保法制の廃止、立憲主義の回復は野党共闘を進める上での一丁目一番地として重視してきた問題だ。安保法制の廃止は必須だ」と断言している。
一方、ウクライナ情勢を受けて国内外の空気は一変した。危機意識が高まる中、日米同盟の強化を象徴する安保関連法への過度な批判は「野党第一党が安保政策を軽視している」との印象を与えかねない。
泉氏は中道路線や現実的な安保政策を掲げ、参院選の共通政策については現時点では白紙との認識だ。立民内には参院選では共通政策の締結を見送るべきだとの声があり、ある中堅議員は「締結するにせよ、内政に関する部分だけでよいのではないか」と語る。ただ、共通政策の堅持を求める左派勢力の声も根強く、議論をすれば党内不和が露呈する可能性もある。
こうした立民の状況を見透かすように、国民民主党の玉木雄一郎代表は、安保など基本政策が異なる共産との関係を明確にしない限り、立民との候補者調整に応じないと主張する。
参院選でも共通政策を締結するのか。締結するにしても安保法制の扱いをどうするのか。泉氏は難しい判断を迫られている。(内藤慎二、沢田大典)