大都市でボラが同時大量死 新月のミステリー

ボラが大量死しているのが見つかった平野川=3月8日、大阪市城東区(大阪府提供)
ボラが大量死しているのが見つかった平野川=3月8日、大阪市城東区(大阪府提供)

大阪市内を流れる平野川で3月7日、千匹以上のボラが死んでいるのが見つかった。翌8日にかけて複数の場所で確認された死骸は実に計7千匹超。大阪府によると、水質に問題はなく、これほどの大量死は前例がないという。くしくも、7日には約400キロ離れた東京都大田区の川でもボラの大量死が確認された。新月の時期に東西の大都市で同時発生したミステリーに、専門家も頭をひねっている。

大阪、東京で同じ日に

発端は3月7日午前9時ごろ。大阪市東成区玉津の平野川で「大量の魚が死んでいる」と近隣住民から通報があった。府職員が確認したところ、その数は計約1200匹。川の水から有害物質は検出されず、水素イオン指数(pH)も中性。水中の酸素濃度も正常値の範囲内だった。

翌8日には同じ平野川でさらに約2千匹、同市内を東西に流れる第二寝屋川でも5カ所で約4300匹の死骸が見つかり、7~8日の2日間で回収された魚は計約7500匹に上った。

府環境管理室によると、ボラの成魚は体長30センチ以上になるが、回収された魚はほぼ全て体長20センチ以下の小ぶりのボラだった。水質や魚体を検査した結果、有害物質が原因とは考えにくいが、明確な死因は不明という。担当者は「数千匹単位でボラが死ぬなんて、聞いたことがない」と驚く。

奇妙なことに、3月7日の午前中には東京都大田区の呑(のみ)川でも、約千匹の魚が死んでいるのを区職員が確認していた。大半がボラだが、こちらも川の水から毒物などは検出されなかった。

大阪と東京の川で、なぜ同時期に魚の大量死が発生したのか。

異変の予兆

ボラの死骸を調べた大阪府立環境農林水産総合研究所の山本義彦主任研究員は「酸素欠乏を起こした可能性が高い」と分析する。有害物質で死んだ場合に魚体に生じる変異がみられず、伝染病ならこれほど短期間に大量死はしないという。

山本氏によると、死んだボラは腐敗が進み、少なくとも死後数日は経過していた。発見当日の水中の酸素濃度が正常でも、それ以前にボラが酸欠を引き起こす要因があったとしたら…。

実際、3月2日夕方ごろに予兆ともいえる現象があった。府によると、大阪市東成区の平野川で、おびただしい数の魚が川面を埋め尽くし、口を突き出してパクパクとさせていた。魚の「鼻上げ」といわれ、酸素が足りないときにみられる特有の行動という。

ボラの生息エリアは主に淡水と海水が混ざる河口や内湾の汽水域。成魚は海水域で生息するが、幼魚のときに大群をなして川を遡上(そじょう)する習性があり、川底のヘドロに多い藻や微生物を好んで食べる。泥がかき回されると水中の酸素濃度が低下することがあるという。

好餌を求めるボラの大群が流れの少ない狭い川に入り込み、さらに川底の泥が何らかの原因でかき回されて酸欠に至ったのではないか-。山本氏はこう推測する。

偶然の一致か

それでは、なぜ大阪と東京という離れた場所で同時期に大量死が確認されたのか。大阪市内の複数の場所で発生した疑問も残る。

手がかりの一つが潮の満ち引きだ。山本氏は「鼻上げが確認された3月初旬は大潮の時期と重なる」と指摘する。3月は3日が新月で、その前後2~3日間は潮の干満差が最も大きい大潮にあたる。

山本氏によると、大潮の時期の川は上流と下流からの水流がぶつかって泥がかき回された上、双方の力が均衡になり、川の流れが一定の時間、止まることがある。この状態になると、水中の酸素濃度は一気に低下する恐れがあるという。

山本氏は大量死の明確な原因を突き止めるのは「難しい」とした上で、次のような仮説を唱えた。

「複数の場所で、流れの緩やかな都市河川にボラの幼魚群が遡上するタイミングと大潮の時期が偶然重なったのではないか。条件がそろえば、大阪と東京だけでなく全国で同様の現象が起きた可能性がある」(吉国在)

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