「ウクライナは滅びず」 同胞の心伝える歌声

ウクライナの平和を願って歌うエバ・ハダシさん=大阪府八尾市
ウクライナの平和を願って歌うエバ・ハダシさん=大阪府八尾市

ウクライナは滅びず-。同国国歌は、侵略に苦しんできた民族の悲哀と自由への渇望、抵抗する勇気の尊さを伝える。ロシアによるウクライナ侵攻で連日犠牲者が増え続ける中、同胞を国歌や民謡で支えようと、大阪を拠点に活動するウクライナ人女性がいる。「自由を失うのは死よりもつらい」と、チャリティーコンサートを開催し、本国への支援を募っている。

《ウクライナの栄光も自由もいまだ滅びず》

3月末、大阪府八尾市の商業施設にウクライナ国歌の壮大なメロディーが響き渡った。舞台で歌い上げたのは首都キーウ(キエフ)出身で大阪市在住のエバ・ハダシさん(46)だ。

キーウ音楽院を卒業後、キーウ国立大学で日本語や日本文学を学び、平成15年から日本で暮らす。現在は語学学校の教師や翻訳の仕事をしながら、歌手としても活動している。

この日は日本ウクライナ文化交流協会(八尾市)が主催したウクライナ支援のチャリティーコンサートに出演。会長の小野元裕さん(52)の妻でボーカリストの彩綺(あき)さん(50)とともに、ウクライナの歌を聴衆に紹介した。

国歌を歌ったエバさんは「ロシア帝国の支配から勇敢に自由を勝ち取ろうという歌詞。21世紀の今、同じ状況が訪れてしまった」と複雑な表情を浮かべる。

コンサートでは行進曲「シーチ銃兵隊」も披露した。同隊はロシア帝国の支配からウクライナ民族を解放するため結成された義勇軍。「何世紀にもわたって自分たちの言語、土地、生活を奪われてきたウクライナ人の自由と勇気への愛情が込められている」とエバさんは語る。

露軍侵攻後、ウクライナ国歌は世界各国のコンサートで連帯のアピールとして歌われ、動画投稿サイト「ユーチューブ」にも複数アップされている。シーチ行進曲の歌詞もウクライナの現状と重なり、同国内外で歌う人が増えている。

「歌により支援の輪が広がっているのはありがたい。ウクライナ人は、どんなつらい状況でも勇敢に前向きに生きてきた」とエバさん。8年前からキーウや関西のジャズライブなどで共演してきた彩綺さんと今後もコンサートを開き、支援を募る予定だ。

故郷には今も親族や友人らがとどまり、戦禍に耐えている。露軍に包囲された南東部マリウポリの惨状などを聞くにつけ、日々心が締めつけられるが、自分の使命を心に刻んでいる。「愛する母国が失われるのは死ぬよりもつらいこと。歌うことでウクライナの音楽や文化を日本人に知ってもらい、支援につながるよう力を尽くしたい」(川西健士郎)

■ウクライナ国歌に込められた歴史と覚悟

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