問われる実行力 難題集中の松野官房長官が沖縄入り

沖縄市の桑江朝千夫市長から要請書を受け取る松野博一官房長官(左)=2日、沖縄市役所(中村昌史撮影)
沖縄市の桑江朝千夫市長から要請書を受け取る松野博一官房長官(左)=2日、沖縄市役所(中村昌史撮影)

沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる松野博一官房長官が2日、沖縄県入りした。基地問題で玉城デニー知事と政府の意見が対立する中、今年は知事選や参院選などが控え、支持拡大につなげる狙いも見え隠れする。「裏方」を自任し、政権の中核として意見集約や調整力が評価される松野氏だが、4月からはワクチン担当相も務めるなど仕事が集中しており、実行力が問われそうだ。

「目に見える形で負担軽減を図っていきたい」。松野氏は2日の視察後、沖縄市の桑江朝千夫(さちお)市長と会談し、5月に迎える日本復帰50年の節目も念頭に基地問題についてこう語った。就任以来、沖縄入りは3度目となる。

沖縄では、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設反対で革新と保守が連携する「オール沖縄」が玉城氏を支援。昨年の衆院選では自公両党が沖縄4選挙区で2勝2敗とし、今年の名護市長選も勝利するなど政府・与党に追い風が吹くが、9月の知事選は苦戦が予想される。

政権幹部は「情報収集力があり指示が的確。リスク管理にもたけた、したたかな人物」と松野氏を褒め、県関係者と水面下で連携を強めていると説明する。しかし、地元には異論があり、県政関係者は「松野氏は沖縄での存在感が薄い。政府のナンバー2として沖縄重視をアピールしてほしい」と注文をつける。

一方、松野氏は北朝鮮による日本人拉致問題も担当するなど仕事が集中している。この点、本人は「身の引き締まる思いで全力で取り組む」と強調。周辺には「任せられた仕事を全うするのが政治家」と漏らす。岸田文雄首相は自民政調会長時代に部下だった松野氏を高く評価しており、要職の兼務を託したのは信頼の証とも言えそうだ。

とはいえ、松野氏が担う基地問題や拉致問題、原油高、ウクライナ避難民への対応、新型コロナウイルスの水際対策などはいずれも政府にとって超重要課題だ。松野氏が所属する安倍派(清和政策研究会)関係者は「仕事ぶりが手堅い」と太鼓判を押すが、対応を誤れば集中砲火を浴びるリスクも負う。(中村昌史)

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