話の肖像画

元自民党総裁・谷垣禎一(1)「頑張ろう」の気持ちが大事

谷垣禎一氏
谷垣禎一氏

《自民党幹事長だった平成28年、趣味のサイクリングで頸髄(けいずい)を損傷する大けがをして、翌29年に政界を引退した。現在は家族や訪問看護師らに助けられながら、都内の自宅で車いす生活を送る。サイクリングウエアに袖を通すのが毎朝の日課だ》


リハビリなんかをするには、こういうのが一番具合がいいんです。体を動かしやすいですからね。右側より左側の手足のほうが冷えてくるものですから、サイクリング用のレッグウオーマーやアームウオーマーも身に着けています。自転車に乗っていたときのものがたくさんあるんですよ。着ているうちに傷んでくるけど、着られるウエアはまだまだあります。

新聞各紙は(タブレット端末の)iPad(アイパッド)で読んでいます。昔は忙しかったから、はしょって読むこともありましたけど、今は時間がありますからね。以前よりよく読むようになりました。ウクライナ情勢などが載っていると、ついつい、いろいろな記事を読んでしまいます。このごろは岸田文雄首相に批判的な記事も多いですね。私はウクライナに関して彼がそんなにずれているとは思わないんだけどなあ。

ただ、今回のロシアによる侵攻で、相当パラダイム(価値観)が変わっていくと思います。それはおそらく1年や2年で分かるものではない。だから岸田さんの対応がいいかどうかは、もう少し時間がたってみないと分からないでしょう。日本の政治もそのパラダイムシフト(価値観の転換)に応じて構想を練り直さなければならなくなるような気がしています。それは私らOBではなく、現役の政治家がやるべき仕事ですがね。


《リハビリのため、脊髄損傷者専用のトレーニングジムに週3回通い、自宅でも自主トレに取り組んでいる》


現役のころは日によって予定はいろいろでしたけど、今は1週間のスケジュールがだいたい決まっているんです。朝は6時半にヘルパーさんがみえたら、ベッドから起こしてもらい、ひげそりや歯磨きをする。それから朝食を作っていただいて食べる。そういう朝のルーチンが終わるのが8時半ぐらい。

その後は自主トレです。メニューは理学療法士さんに教わったことを思い出しながら自分で組んでいます。例えば、腕の上げ下げを左右各10回5セットとか。常に全部できているわけじゃないですけどね。1時間ぐらいやれればいいんだけど、ついさぼっちゃって40分ぐらいになることもあります。

月曜、木曜、金曜は外にリハビリに行っています。1回3時間ぐらい。帰ったらヘルパーさんに風呂に入れてもらって新陳代謝を良くする。午後5時ごろになったら、またヘルパーさんに来ていただいて夕食をとり、9時過ぎにまた来ていただいて寝かせてもらう。空いた時間は本を読むなどしています。

リハビリはつらいといえばつらい。でも、障害があっても体を動かすのは楽しいし、牛の歩みでも成果が出れば励みになります。それと「頑張ろう」という気持ちも大事。手をうまく使えなくなったので、リハビリにねじの開け閉めをしているのですが、これが辛気臭くて…。だけどヘルパーさんが帰った後、もう一杯焼酎が飲みたくなったときに、酒瓶のキャップを開けられなかったら悔しいじゃないですか。これも「頑張ろう」という気持ちですよね。弱者が少しでもそういう気持ちを持てる仕組みをつくることが大事だと、つくづく思います。(聞き手 豊田真由美)

【プロフィル】谷垣禎一

たにがき・さだかず 昭和20年、東京都生まれ。東大法学部卒業後、司法試験に合格し弁護士に。58年、元文相の父、専一氏の急逝を受けて衆院旧京都2区補欠選挙に出馬し、初当選。財務相や国土交通相などの要職を歴任し、自民党が野党だった平成21~24年には党総裁を務めた。党幹事長だった28年、趣味のサイクリングで頸髄を損傷する重傷を負い、翌29年に政界を引退した。

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