露軍、チェルノブイリ原発から完全撤退 きょう停戦再交渉

シェルターに覆われたチェルノブイリ原発=2021年4月(AP=共同)
シェルターに覆われたチェルノブイリ原発=2021年4月(AP=共同)

ロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナ政府当局は3月31日、露軍が掌握した北部チェルノブイリ原発から完全に撤退したと発表した。一方、露国防省と親露派武装勢力は同日、激戦が続いてきた東部マリウポリを掌握したとの認識を示した。ロシアとウクライナの停戦交渉は1日、オンライン形式で再開される予定だが、双方の隔たりはなお深く、進展があるかは不透明だ。

露軍部隊のチェルノブイリ原発からの撤退の開始は31日朝までに判明。ウクライナ当局は同日夜、「現在、敷地内に部外者はいなくなった」と発表した。

露国防省は北部方面の部隊を「再編制」し、東部の制圧に注力する方針を発表しており、撤退は「再編成」の一環だとみられる。

一方、露国防省は31日、マリウポリから脱出を図ったウクライナ軍ヘリコプター2機のうち1機を、鹵獲(ろかく)した米対空ミサイル「スティンガー」で撃墜したと発表。ヘリにはウクライナ守備部隊の司令官らが搭乗していたとした。

タス通信によると、同日には、露軍と共同戦線を張る東部の親露派武装勢力「ドネツク人民共和国」(自称)のプシーリン首長が、マリウポリに「地方行政府」を設置するとも発表していた。

マリウポリを制圧した場合、ロシアはアゾフ海の支配権を確立し、東部の親露派支配地域と2014年に併合した南部クリミア半島を陸路で結ぶことが可能になり、大きな前進となる。

停戦交渉は1日、オンライン形式で再開される予定。3月29日のトルコでの交渉ではウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟断念を意味する「中立化」をめぐり、双方に一定の歩み寄りがみられた。

ただ、即時撤兵を求めるウクライナに対し、ロシアは侵攻を継続する構え。また、ウクライナはクリミアや東部の親露派支配地域の帰属問題を継続協議とすることを提案しているが、ロシアは「停戦にはウクライナによるクリミアへの露主権の承認と東部の『独立』の承認が必要だ」との主張を崩しておらず、交渉は難航が予想されている。

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