【ワシントン=大内清】バイデン米政権は30日、ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が、軍指導部や側近から戦況や制裁の影響について誤った情報や不正確な報告を受けており、プーチン氏自身もそのことにいらだちを募らせているとの分析を明らかにした。米当局者は同日、「プーチン氏と国防省の間には現在、不信感からくる拭い難い確執がある」と述べた。
分析内容は情報機関が収集した情報を基にしたもの。バイデン政権には、プーチン政権中枢の動きを暴露することで同政権を揺さぶる狙いがあるとみられる。同当局者は「プーチン氏は露軍の徴集兵がウクライナ(の戦線)に動員され戦死していることさえ知らされていなかった。正確な情報の伝達系統が明らかに破綻している」と語った。
ホワイトハウスのベディングフィールド大統領報道官も同日の記者会見で、「プーチン氏の助言者たちは、真実を伝えるのを恐れるあまり、露軍が機能していないことや制裁によって露経済が受けた損害の規模を正確に報告していない」と指摘。こうした機能不全は、ウクライナ侵攻がロシアにとって「戦略的な失敗」だったことを如実に物語るものだと強調した。
国防総省のカービー報道官は同日の記者会見で、プーチン氏がこのまま正確な報告を受けられずに戦況を見誤れば、ウクライナとの停戦交渉にも影響する恐れがあるとの懸念を示した。
一方、バイデン大統領は同日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、同国政府に直接、5億ドル(約600億円)の財政援助を行うなど引き続き支援を強化することを改めて表明した。またゼレンスキー氏は、ロシアとの停戦交渉の状況をバイデン氏に説明した。