【ロンドン=板東和正】ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、ロシア側が首都キエフなどでの軍事活動の削減を表明したことを受け、キエフの住人からは安堵(あんど)とともに、疑念の声も上がっている。
キエフ在住の国際政治アナリスト、ボーダン・イヴァシュチェンコさん(25)は30日、通話アプリでの取材に対し「(キエフの住民らが)以前のように苦しむことがなくなるのであればよいニュース」としながらも、「楽観はしていない」と語った。キエフ周辺や各地では同日にかけても露軍の攻撃が続き、緊張緩和の兆候が見られないためという。「露軍が空爆を仕掛けてくる様子を目にして、何も変わっていないんだなと実感した」。
イヴァシュチェンコさんは一方、ロシアがキエフを制圧してウクライナを支配下に置くとの目標の達成に失敗し、軍の一部が実際に後退を始めたとみている。露軍の後退は「撤退ではなく再配置」との見解を示した米国防総省のカービー報道官と同様に、「(露軍は)一部の兵士をキエフ(近郊)に残し、ウクライナ南東部に兵力を集中させる」と予測。「露軍が(キエフ近郊から)完全に撤退すると考えるのは甘い」と話した。
同じく市内在住の男性、オレクシ・ロヒノブさん(22)は30日、通話アプリを通じ「ロシアはキエフを征服する考えを放棄した」と述べ、安堵の様子を見せた。ロヒノブさんによると、キエフ周辺の防空能力は向上しており、最近はキエフ近郊を狙ったミサイルの多くが撃墜されているという。「露軍の苦戦で作戦が変わり、大切な街への攻撃が少なくなるのはうれしい」と語った。ただ、停戦の実現に過度な期待は示さず「ロシアが停戦交渉で決めた内容を突然翻しても驚かない。ロシアを信用していない」と強調した。