【北京=三塚聖平】ロシアに軍事侵攻されたウクライナが示した安全の保証に関する新たな枠組みをめぐり、関係国として名前を挙げられた中国が慎重姿勢を見せている。ともに協力関係を持つロシアとウクライナのはざまでジレンマに陥る中、自らの立場をさらに難しくしかねないと警戒しているとみられる。
新枠組みは、トルコで3月29日に開かれたロシアとの停戦交渉でウクライナ側が提案した。北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念して「中立化」を受け入れる代わりに、関係国に安全の保証を求めるものだ。ウクライナは、関係国として米英仏、中国、ロシアの国連安保理事会常任理事国のほか、イスラエルやトルコなどを挙げている。
中国外務省の汪文斌(おうぶんひん)報道官は30日の記者会見で、停戦交渉について「ロシア、ウクライナの双方が積極的なシグナルを発した」とし、「国際社会は対話、協議のためになることを多く行うべきだ」と述べつつも、新枠組みについて「ウクライナ情勢の緩和を促進するため、中国は引き続き自らのやり方で建設的な役割を発揮する」と曖昧な態度をみせるにとどめた。
習政権としては、新枠組みに対するロシアや国際社会の動向を見極め、突出した動きを避ける考えとみられる。
中国は、過去に引き受けた「保証」にも直面する。ウクライナは1994年のブダペスト覚書で、核兵器を放棄する見返りとして、米英露から安全の保証を得た。中国も、同年にウクライナの安全の保証に関する声明を出した。習国家主席の就任後も、2013年にウクライナのヤヌコビッチ大統領(当時)との首脳会談に際して出した共同声明で、核兵器を使ってウクライナが侵略されたり威嚇を受けたりした場合、「ウクライナに相応の安全の保証を提供する」と明記した。
現在、ロシアの侵攻にも動かない中国に対し、過去の約束を果たしていないとの批判がある。習政権としては、ウクライナ問題に深入りしたくないのが本音だ。