新電力倒産最多の14件 調達費膨らみ苦境

電力小売り事業に新規参入した「新電力」が苦境に陥っている。帝国データバンクは30日、令和3年度の新電力の倒産件数は14件で前年度(2件)の7倍となり、過去最多になったと発表。最近は小売り事業からの撤退や新規申し込み停止も相次ぐ。ロシアのウクライナ侵攻などに伴う世界的なエネルギー価格高騰で電力調達コストが膨らみ、採算が急速に悪化している。今年4月で丸6年を迎える電力の小売り全面自由化は曲がり角を迎えている。

「エルピオでんき」を展開するエルピオ(千葉県市川市)は電力供給サービスを4月末で停止し、電力小売り事業から撤退すると発表。売りとする低価格の維持が困難になったためで、顧客には他社への切り替えを促している。太陽光発電を主力とするウエストホールディングスも今月25日、子会社で営む電力小売り事業をやめると発表した。

ホープエナジー(福岡市中央区)も25日に東京地裁へ自己破産を申請し、同日破産手続き開始決定を受けた。負債は300億円。

帝国データによると、新電力は昨年4月に706社あったが、約4%の31社がこの1年間で倒産や廃業、事業撤退などを決めた。

最大の要因は、電力調達価格の高騰だ。新電力の多くは自前の発電設備を持たず、調達の多くを事業者同士が電気を売り買いする卸電力市場に頼る。だが、卸電力市場で取引価格は高止まりしており、新電力の経営を圧迫している。電力の販売価格が家庭向けに比べて低めに設定されている企業向けでは、調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」状態になっている新電力も少なくないとみられる。

資本力が乏しく卸電力市場への依存度が高い新電力は特に苦しい。帝国データの担当者は「足元の電力調達価格の高騰が収まらない限りは厳しい状況が続くだろう」と指摘している。

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