【ワシントン=渡辺浩生】米国防総省のカービー報道官は29日の記者会見で、ウクライナの首都キエフ郊外に待機していたロシア軍部隊の一部が移動したことを明らかにした。カービー氏は露軍の移動は「撤退ではなく再配置」との見方を示したうえで、ロシアはキエフを制圧しウクライナを支配下に置くという目標の達成に失敗したとの見解を述べた。
露国防省は同日、キエフ周辺などの軍事活動を大幅に削減すると発表したが、カービー氏は「少数」の部隊が北方に移動したとする一方、移動の規模や目的を判定するのは時期尚早とし、引き続きウクライナの他の地域への重大な攻撃に警戒する必要があると訴えた。
カービー氏はまた、キエフへの空爆はこの日も続けられたとし、ロシアはウクライナに「ひどい残虐行為をすることがまだ可能だ」と述べ、楽観視できないとの見方を示した。
露国防省は首都近郊の部隊縮小とともに東部ドンバス地域の「解放」に戦力を集中していると表明したが、カービー氏は「目標を動かし、最近の(軍事的)進展のなさを次の段階移行の一環とすり替える試み」と指摘。「ウクライナの軍と市民の戦場における勇気を隠すことはできない」と述べ、ウクライナが侵略に抵抗し続けるため必要な軍事支援を提供すると強調した。