京都市京セラ美術館(同市左京区)で開催中の「兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~」展(5月22日まで)では、過去最大級の36体の兵馬俑が展示されている。高さ190㌢を超えるものもある兵馬俑だが、その迫力だけでなくディテールに注目すると面白い。
被り物で判断する役職
始皇帝軍を再現した兵馬俑は同じものはないとされ、役職は頭に被っているものから推測できる。
推定8000体とされる兵馬俑の中でこれまで11体しか見つかっていない将軍俑は、頭部に2つに分かれた鶡冠という冠をかぶっている。鶡はヤマドリのことで攻撃されたときに勇猛に反撃することからその尾羽を武人の冠に使ったという。
鎧甲軍吏俑は「双版長冠」を被っていることから中級の武官と判断できる。兵卒は冠を被っておらず、鎧甲武士俑のように土ぼこり対策として帽子を着用していることもある。まげを右側に結っている兵士が多数派だという。
手の形から武器を類推
兵馬俑は2000年以上も土中に埋まっていたため、木製の武器は朽ちて原形をとどめていない。しかし、手の形から各人が持っていた武器が類推できる。
右手を斜めに丸くしている戦服将軍俑は剣を持っていたと考えられており、右手に剣を持っていることから左利きのようだ。鎧甲軍吏俑は右手を丸くして水平にしていることから長柄の武器を立てて持っているとみられている。跪射武士俑が右手の親指を立てているのは弩(いしゆみ、石や矢を発射する強力な弓)の引き金に指をかけているためで、左手は弩の弓の部分を押さえている。
かかとに滑り止め
跪射武士俑を後ろからみると、履物の底に細かい滑り止めが施されているのがわかる。黄土高原の土壌は雨に弱く滑りやすいためで、兵馬俑がいかに精密に再現されているかをうかがい知ることができる。
日本初公開となる一級文物(最高級の貴重文物を指す中国独自の区分)を含む約200点を展示している本展では、こうした細部にわたるこだわりを間近で観察することができる。2千年以上前の中国の風土や文化、当時を生きた人々を想像してみると一層楽しめるはずだ。