ロシアとウクライナの代表団は29日、トルコ最大都市イスタンブールで停戦交渉を再開した。対面による交渉は4回目。ロシアによるウクライナ侵攻から1カ月以上が経過。ウクライナ側はロシアが要求する「中立化」で譲歩する姿勢をみせるが、両国の条件をめぐる隔たりは大きく、早期の戦闘停止の実現はなお困難との見方が強い。
停戦交渉は2月28日以降、オンライン形式も含め断続的に行われてきたが、対面式は3月7日にベラルーシで行われて以来。トルコのエルドアン大統領は29日、ロシアとウクライナの代表団に「紛争の拡大は誰にとっても利益にならない」と述べた。
ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は29日、交渉で最も重要なのはウクライナの安全を保証する国際的な枠組みの構築で、次いで人道問題解決に向けた停戦の実現だと述べた。同国のゼレンスキー大統領は27日、ウクライナの安全が保証されるのを条件に北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念し、「中立化」の用意があると表明した。
ただ、親ロシア派が実効支配するウクライナ東部やロシアが併合したクリミア半島の扱いなど、他の項目も含め合意に至るかは予断できない状況。ロイター通信によるとペスコフ露大統領報道官は28日、「(停戦協議で)具体的な収穫や進展はない」と述べた。
一方、ロシアのショイグ国防相は29日、ウクライナ軍の戦闘能力が著しく低下し、今は東部ドンバス地域の「解放」に戦力を集中していると表明した。
首都キエフへの侵攻など作戦の難航を受け、方針の転換を示唆した。英国防省が28日に発表した分析によると、ロシアの民間軍事会社「ワグナー」の傭兵(ようへい)も派遣し、戦力増強を図った。 露軍の包囲が続く東部マリウポリでは28日、ボイチェンコ市長が同市での死者が5千人近くに達し、うち210人が子供だと発表した。市内にはなお市民16万人が取り残されているとした。西部リウネ州では露軍のミサイル攻撃により燃料貯蔵施設が破壊。西部の燃料貯蔵施設への攻撃は3日連続。ウクライナ軍の補給を断つ狙いだとみられる。