震災の犠牲になった39頭を胸に 厩舎を再建した乗馬クラブ代表

愛馬のそばで「世界に通用する人材や馬を育てたい」と語る鈴木嘉憲さん=宮城県亘理町(石崎慶一撮影)
愛馬のそばで「世界に通用する人材や馬を育てたい」と語る鈴木嘉憲さん=宮城県亘理町(石崎慶一撮影)

宮城県亘理町 「Bell Stable」代表 鈴木嘉憲さん(40)

宮城県亘理町で乗馬クラブ「Bell Stable(ベル・ステーブル)」を経営する。クラブハウスには東日本大震災の津波で命を落とした39頭の馬と3匹の犬の名前を記したプレートを掲げている。「犠牲になった馬のためにも頑張ろうという気持ちになる」とプレートを見つめる。

同県名取市の沿岸部で乗馬クラブを経営していたが、津波で厩舎(きゅうしゃ)が流された。自身とスタッフ4人のうち3人は避難し無事だったが、1人は現在も行方不明のままだ。オーナーから預かっていた馬やクラブで所有していた馬計41頭も津波にのまれた。

水が引き、クラブに戻った際、がれきの間に立っていた1頭の馬を見つけた。奇跡的に助かった馬の姿に目頭が熱くなった。生き残った馬をもう1頭見つけたが、残る39頭はがれきの中やクラブ近くの仙台空港の滑走路などで息絶えていた。

その後、県外の乗馬クラブなどから就職の誘いがあった。だが「被災から逃げるような感じがして踏み出せなかった。犠牲になった馬のためにも県内で乗馬クラブを再開しようと決めた」と話す。

震災翌月の4月からクラブを再開する場所を探し始めた。仙台市内でテニスコート8面を借り、義援金などを資金にして仮設の厩舎を整備。8月13日にオープンした。「死んだ馬の魂が戻って来る場所として、8月のお盆までに整備したかった」と振り返る。

生き残った2頭もけがを負い療養が必要だった。「ゼロからの再スタート」だったが、しだいに預託馬やクラブの会員が増えた。「10年以内に自分の土地で乗馬クラブを再建する」という目標を立て、経営に励んだ。

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