理想と現実の落差に悲劇が 段田安則「セールスマンの死」

「初演ならやったもの勝ちだけど、金字塔だと考えると逃げたくなるので、あんまり考えないようにしている」と語る段田安則 (三宅令撮影)
「初演ならやったもの勝ちだけど、金字塔だと考えると逃げたくなるので、あんまり考えないようにしている」と語る段田安則 (三宅令撮影)

老いたセールスマンの夢と挫折、その家族を描いた「セールスマンの死」(アーサー・ミラー作、広田敦郎翻訳、ショーン・ホームズ演出)が4月4日から、PARCO劇場(東京都渋谷区)で上演される。近代演劇の金字塔に挑む主演の段田安則は「うまくいけば、すごいものができるはず」と意気込む。

1950年代前後の米・ニューヨーク。かつての敏腕セールスマンのウィリー・ローマンも63歳になり、成績が落ち、2世の社長からは厄介者扱い。妻は献身的に支え続けてくれるが、30歳を過ぎても自立できない2人の息子とは微妙な関係だ。やがて思い描いていた理想が崩れ始め、行き詰まったウィリーは…。

49年にニューヨークで初演。トニー賞、ピュリツァー賞などを受賞し、これまで国内外の名優がウィリーを演じてきた。

そのウィリーの、ままならなさに気持ちを寄せる。「生き方が下手な人。幸せの尺度がモノとかカネに寄り過ぎている。小心者なのに大言壮語で文句ばかり」といい、「理想と現実がかけ離れてしまったところに悲劇がある。つらい」。

物語の軸となるのは、ウィリーと長男ビフとの関係だ。ビフは父親のゆがんだ価値観を受け継いだが、その欺瞞(ぎまん)に気付き、自分の道を踏み出そうとする。「悲しくて美しい物語、でもつらい」と話し、「よりによって、なんで今、こんな暗い話をやるんだろうと思った」と振り返る。

「お芝居は現実が大変じゃない時の方が楽しめる」と考える。昨今の世情は、コロナ禍からロシアのウクライナ侵攻まで、決して明るくない。迷いを感じたときに、伴侶を亡くした知人から「暗い(気持ちの)ときは、コメディーなんかより、暗い作品の方が見られる。だから、見に行く」と言われ、「演じる意味はある」と思い直したという。

今は、初日への不安と期待で胸がいっぱいだ。「稽古をしても、まだ手応えが分からない。皆さまがどう思われるか、とても気になる」とほほ笑んだ。

4月29日まで。問い合わせはサンライズプロモーション東京、0570・00・3337。その後、長野、京都、愛知、兵庫、福岡で公演する。(三宅令)

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