ロンドンの甃

戦禍で人生を奪われるウクライナ市民

ウクライナ情勢の取材に携わるようになってから、通信アプリなどでウクライナ国内の市民と日々、会話をすることが多くなった。

「今日は爆撃の音があまり聞こえず静かな一日だった。明日はどうなるか分からないけれど…」。ロシア軍の激しい攻撃を受ける首都キエフや東部ハリコフなどの住民が街の現状を教えてくれる。情報だけでなく、やり場のない怒りを伝えてくるキエフ在住の20代の青年もいる。

その青年は大学を卒業したばかり。国際政治を専攻し、国内の研究機関での勤務を夢みていたが、露軍の侵攻により就職活動は中断。定職に就けていない。

青年は「必死で勉強してきたのにロシアは私のキャリアを奪った」と語った。失意から何もする気がおきず、より安全な地域に避難する気力も失ったという。

ウクライナに残る市民の中には心の病に悩む人も少なくない。高齢の両親を抱え、ウクライナから避難できないという女性は「露軍の兵士に痛めつけられる夢でうなされる」と話した。鬱病を患い、体重も減った。日々の怒りや悲しみを詩につづり、感情を吐き出すことで精神のバランスをかろうじて保っているそうだ。ウクライナ侵攻で、罪のない市民が人生を奪われている現実を痛感する。(板東和正)

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