【シンガポール=森浩、北京=三塚聖平】南太平洋のソロモン諸島が、中国との間で安全保障協力に関する協定締結を計画していることが分かった。艦艇の寄港など事実上、中国軍駐留を可能とする内容だ。南太平洋での中国の影響力拡大につながる可能性があり、近隣のオーストラリアやニュージーランド(NZ)が反発を強めている。
協定は概要を示す草案がインターネット上に流出したことで発覚した。草案には中国艦艇の寄港や物資補給を認めることや、ソロモンが治安維持面で必要な場合、中国に武装警察や軍の派遣を要請できることなどが記されている。
この動きに対し、豪州のモリソン首相は28日、「(太平洋)地域に存在する絶え間ない圧力と脅威を思い起こさせる」と不快感を示した。豪州は2017年にソロモンと安保協定を締結しており、軍事面でも関係が深い。NZのアーダン首相も同日、中国を念頭に「重大な懸念だ」と危機感をあらわにした。
各国が懸念を強めるのは、ソガバレ首相率いるソロモンの中国接近が顕著なためだ。19年9月に台湾と断交し、中国と国交を結んで以降、国内では競技場建設など中国資本による事業が進んでいる。昨年11月には4人が死亡する大規模な反政府デモ起きたが、ソガバレ氏はデモ後に治安維持能力向上のために中国から警察関係者の受け入れを決めている。
急速な親中化を警戒した米国は今年2月、ソロモンに大使館を開設する計画があると明らかにしており、同国は米中摩擦の最前線となりつつある。
ソガバレ氏は29日、流出した文書はあくまで草案であることを強調した上で、「中国に軍事基地を建設するよう求める意図は全くない」と説明。豪州やNZの懸念は「非常に侮辱的だ」と反発した。中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官も29日の記者会見で、安保協定は「ソロモン社会の安定や地域国の共同利益の増進に有益で、非難できないものだ」と主張した。