ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、両国の代表団による対面の交渉が29日、トルコのイスタンブールで始まる見通しになった。ウクライナのゼレンスキー大統領は北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念する「中立化」の用意があると表明しており、露との隔たりがどの程度埋まるかが焦点となる。
一方、ウクライナ大統領府は27日、東部で反攻が進んでいると言明したが、米CNNテレビは28日、激戦が続く東部マリウポリのボイチェンコ市長がインタビューで、マリウポリは「露軍の手に渡った」と述べたと伝えた。市長によると、同市での死者は5千人近くに達したという。
ゼレンスキー氏は27日、露の記者とのオンライン会見で中立化を受け入れる意向を示したほか、親露派武装勢力が実効支配するウクライナ東部ルガンスク、ドネツク両州についても「妥協」の余地があるとした。
ただ、合意には第三国による保証が不可欠で、国民投票を行う必要もあると主張した。政権交代などを意味するとみられる「非ナチス化」や非軍事化を拒否する姿勢は崩していない。
トルコ政府当局者は28日、交渉は同日始まると述べたが、露大統領報道官は代表団の現地入り後の29日から始まるとした。
露軍は26日、ウクライナ西部リビウの燃料保管施設をミサイルで破壊。同国政府は露軍が燃料や食料の施設を破壊し始めたと述べた。また、ウクライナの軍事当局者は露が東部を支配下に収め、韓国と北朝鮮のような分断を狙っているとの見方を示した。
一方、ウクライナ大統領府のアレストビッチ顧問は27日、「東部のハリコフやスムイで反攻作戦が進んでいる」と表明。南部ヘルソンでも反攻を準備しているとした。
こうした中、ロシアが「独立」を承認した東部の親露派勢力「ルガンスク人民共和国」(自称)のパセチニク首長は27日、近く露編入の是非を問う住民投票を行う考えを表明した。しかし、旧ソ連圏問題を担当する露下院委員会のカラシニコフ委員長は「適切な時期ではない」と指摘、慎重な姿勢を示した。